夜勤交代勤務がホルモン依存性のがんの発生との関連を明らかにする研究の一貫として、①前立腺特異抗原PSAレベルの経年変化と夜勤交代勤務への暴露との関連、②夜勤交代勤務の副腎アンドロゲン(DHEAS)の加齢に伴う変化に対する影響を分析した。調査対象は某製造業に勤務する男性40歳から64歳とした。平成27年度はDHEAS、PSAを測定し、平成26年度に測定したDHEAS、平成23年度に測定したPSA等のデータ等とレコードリンケージを行い、職種、交代勤務歴、生活習慣、他の身体所見との関連を分析した。 PSAの経年変化は251人で検討できた。PSAの変化量に強く関係していたのはベースラインのPSA値であり、勤務形態との間には有意な関連はなかった。また、PSAの変化とDHEASとの関連も認められなかった。 DHEASの経年変化を分析できたのは798人であった。重回帰分析においてベースライン(2014)の血中DHEASには、年齢が強い負の関連を示した。また、血圧、ヘモグロビン、HDLコレステロール、飲酒習慣とは正の関連を示した。DHEASの1年間の変化を一般線形モデル(反復測定)にて、事務系日勤者(173人)、現業系日勤者(326人)、現業系交代勤務者(287人)の3群間で比較した。年齢調整後の推定平均は事務系日勤者は2264ng/mlから2305に、現業系日勤者は2187から2251、現業系交代勤務者は2234から2193に変化しており、現業系交代勤務者のみが減少傾向を示し、有意に異なる傾向を示した。 以上、本研究からは夜勤・交代勤務が前立腺腫瘍のリスクを高める可能性を示唆する所見は認められず、いくつかの先行研究で指摘されているような有意な関連は認められなかった。 DHEASは老化バイオマーカーの一つであるが、夜勤交代勤務による労働ストレスが減衰を加速する可能性が示唆された。
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