研究課題
平成27年度はこれまでに得られた肺内の石綿ばく露指標としての含鉄小体及び含鉄小体とともに位相差顕微鏡で観察できる鉄蛋白に覆われていない裸の繊維(以下非被覆繊維)の計測結果とすでに計測が行われている同一個体における肺内の書類別石綿繊維の計測結果を比較検討した。なお、含鉄小体の鉄蛋白を剥離して芯となっている石綿繊維の同定を予定していたが、これまで使用していた電子顕微鏡の機種更新にともない、従来の方法での同定作業が困難になり、この課題は進まなかった。解析したのは日本人18例、韓国人39例の剖検肺で含鉄小体、及び非被覆繊維の計測を行い、これをすでに分析電子顕微鏡で同定している石綿繊維の濃度と比較した。含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度と石綿・非石綿繊維濃度との相関は、含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度ともに、石綿・非石綿繊維濃度と有意な相関を認めた(p<0.05)。石綿・非石綿繊維を長さ1μm未満と以上に分けて、含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度と同様に相関を検討した結果、角閃石系石綿繊維濃度とは含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度ともに有意な相関を認めなかったが、その他の繊維濃度とは含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度ともに有意な相関を認めた(p<0.05)。含鉄小体濃度、非被覆繊維濃度は、石綿・非石綿繊維濃度と概ね有意な相関が得られたが、含鉄小体濃度においては、含鉄小体の芯になりやすいとされている角閃石系石綿濃度とは有意な相関が得られなかった。これまで非被覆繊維濃度の有用性は指摘されてこなかったが、本研究における含鉄小体濃度と非被覆繊維濃度の肺内繊維濃度との相関を比較すると、非被覆繊維濃度との相関が含鉄小体濃度との相関よりも強いことが確認された。石綿曝露が比較的少ない今回の対象例では、非被覆繊維を計測することにより、より正確な曝露評価を可能にすると考えられた。
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Industrial Health
巻: 54 ページ: 未定
http://doi.org/10.2486/indhealth.2015-0159