研究課題
篠山市住民797名(男性364名、女性433名)で血清visfatin(Nampt)濃度を測定した。研究計画申請時に購入する計画だったvisfatin試薬は、改良販売のためか従来品は販売中止となった。数か月待機したが、販売開始後も円滑な必要数の試薬購入ができなかった。しかし最終年度で、AdipoGen製visfatin試薬を使用し、研究計画期間内に797名で測定を終了することができた。Visfatinは冠動脈不安定プラークで多く発現し、脳梗塞、脳出血、外傷性脳傷害でも、イベント発生後に血中濃度が上昇すること、糖尿病患者で血糖値と正の関連があることが報告されている。本研究では特定健診を受診した40~64歳の一般住民集団で、性・年齢を調整しても血糖、HbA1c、血圧、BMI、中性脂肪と有意な正の関連、HDLコレステロールとは有意な負の関連を重回帰分析で認めた。さらに吹田スコアを用いて、冠動脈疾患発症確率を計算し、visfatin4分位と発症確率の関係をカイ2乗検定で検討したところvisfatinが高いほど発症確率は有意に高かった。従って、visfatinは冠動脈疾患の危険因子であるメタボリック症候群との関連が強く、この関係を通じ冠動脈疾患発症にも寄与する可能性が示唆された。また喫煙者ではvisfatin濃度が高いとの報告があるが、本研究でも男性喫煙者では、吸わない、禁煙した、現在喫煙するの順にvisfatinは有意に高かった。また男性では年齢と収縮期血圧値を調整した共分散分析で、visfatin濃度の4分位とCAVI(心臓足首血管指数)の関連を検討したところ、有意な負の関連を認めた。喫煙やCAVIとの関連からは、防御反応としてvisfatinが上昇する可能性も考えられ、長期追跡期間をおいて喫煙、CAVIとvisfatinの関係を検討する必要性があると考えられた。
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