対象自治体に在住する65歳から84歳までの住民8052人を対象に第3回目調査を実施した。有効回答数は4968人で、回収率は62%であった。 これまでに蓄積したデータをもとに分析を行った。介護が必要かという質問に対して、「必要ない」「必要だが受けていない」「受けている」と回答した者について、項目事の集計を行った。生活の不便を感じている、外出を控えている、転倒不安があるに関する項目は、介護が必要だが受けていない群と介護を受けている群において共通して、機能が低下していた。手段的日常生活動作(IADL)に関して、家事、買い物、食事の用意などは、介護を受けている群では低下を示したが、介護が必要だが受けていない群では、比較的保たれていた。日常生活動作(ADL)に関して、歩行能力、洗面、着替え、入浴、トイレについては、介護を受けている群においても、比較的維持されていた。精神的健康度は、介護を必要だが受けていな群および受けている群において、共通して低下していた。 これらの結果から、健常な状態から、介護を必要と感じる状態を経て、介護を受けるに至る過程において、最初に社会的活動に不都合をきたし、IADLが阻害されると実際に介護を受け始めることが示唆される。一方、日常生活動作については、介護を受けている場合でも維持されている場合も多く、介護予防対象者のスクリーニングには感度が低いと考えられる。また、精神的健康度については、介護を必要と感じる早い段階から低下することが示唆される。 パネルデータの蓄積が得られたことから、今後、パネルデータによる実証分析を進めていく予定である。
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