研究課題/領域番号 |
25460829
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
川波 祥子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70449940)
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研究分担者 |
堀江 正知 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (90341528)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 在職死亡 / 標準化死亡比(SMR) / 産業医 / 労働者 / 循環器疾患 / 健康診断 / 事後措置 / がん検診 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで継続してきた研究で信頼関係を構築してきた多業種の大規模事業場とその専属産業医を対象に、労働者の在職死亡例について、個人情報保護を徹底したうえで、性、年齢、死因及び直近の健康診断結果を取得し、人口動態統計による就労者の死亡率と比較することにより、1)法定の健康診断による循環器疾患の死亡の抑制、2)事業場が独自に追加した検査による目的疾患の死亡の抑制、3)問診や事後措置の実施による死亡の抑制について明らかにすることを目的として実施してきた。 平成26年度は、上記の産業医を対象に事業所の健康管理対象者数、死亡者数、死因に加え、事後措置の実施状況、独自に追加している検査を調査した。平成27年3月末時点で22事業場から回答を得た。対象労働者数は153,927人、死亡者数は102人で, 人口動態統計と比較した標準化死亡比(SMR)は、男性0.201、女性0.192、昭和60年モデル人口による年齢調整死亡率(10万人対)は、男性61.6、女性24.3であった。男性の死因は、がん36.6%、循環器疾患26.9%、自殺16.1%で、がんは膵がんが7.5%と最多で、次いで肺がん5.4%だった。女性の死因はがん55.6%と最多で、乳がんが2人と最多だった。死亡者の健康診断結果の解析では、循環器疾患での死亡者には、喫煙者、高血圧が多い傾向を認め、在職者の死因との関連が示唆された。事後措置について、すべての事業所で要精密検査対象者の一部またはすべてに産業医や看護職が受診勧奨と結果確認を行っていた。また就業上の措置を講じる際に参考にする項目は、血圧が100%と最多で、次いで血糖値87.0%、心電図73.9%、メンタルヘルスに関する症状56.5%だった。追加検査では、尿酸値の測定が最も多く行われ、がん検診では大腸がん検診(便潜血)が100%、胃がん検診87.0%など高い実施率であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き2年目の調査を行い、予定通り対象事業場の産業医から事業場の健康管理対象者、在職者死亡の死因、健康診断結果を報告させ、死因の集計、循環器疾患等による死亡とBMI、高血圧、耐糖能、脂質値、メタボリックシンドロームとの関連を解析することができた。対象事業場の産業医に対しては調査結果をまとめたニュースレターを作成しており、平成27年度調査時に送付予定である。また、今回は事業場が独自に追加している検査やがん検診、事後措置についての調査も実施できた。ただし、専属産業医のいる大企業であるため、事後措置やがん検診の実施率が非常に高く、その違いによる在職死亡の差を統計学的に証明するまでの結果は得られなかった。今後より詳細に結果を分析し、死亡抑制に影響している因子がないか検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25、26年度の調査から、専属産業医のいる大規模事業場では一般国民や一般就業者と比較して死亡率が低く、特に循環器疾患及び自殺で予防効果が大きいことが明らかとなった。また、全がんによる死亡率も低い傾向があり、大規模事業場の産業医を中心とする健康管理が在職死亡を抑制している可能性が示唆された。平成27年度は、引き続き同様の調査を継続してデータを蓄積するとともに、最終年度である今年度は、これまで平成20年から蓄積してきたデータを統合して、年代別死因の経年推移等を解析し、継続的な健康管理による死亡抑制の効果や、今後取り組んでいくべき疾病の傾向についても明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月に開催予定であった会議について、研究者の日程が合わず平成27年度4月19日に開催したため、当該年度の旅費が使用されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり、平成27年度4月に予定していた会議を行ったため、この会議に要した旅費については翌年度分として請求する。
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