研究実績の概要 |
本研究は、これまで継続してきた研究で信頼関係を構築してきた多業種の大規模事業場とその専属産業医を対象に、労働者の在職死亡例について、個人情報保護を徹底したうえで、性、年齢、死因及び直近の健康診断結果を取得し、人口動態統計による就労者の死亡率と比較することにより、1.法定の健康診断による循環器疾患の死亡の抑制、2.事業場が独自に追加した検査による目的疾患の死亡の抑制、3.問診や事後措置の実施による死亡の抑制について明らかにすることを目的として実施してきた。 平成28年3月末時点で18事業場から回答を得た。対象労働者数は78,603人、死亡者数は75人で、人口動態統計と比較した標準化死亡比(SMR)は、男性0.333、女性0.397、昭和60年モデル人口による年齢調整死亡率(10万人対)は、男性94.9、女性58.8であった。男性の死因は、がん50.0%、循環器疾患21.2%、自殺18.2%で、がんは肺がんが15.2%と最多で、次いで胃がん7.6%だった。女性の死因はがん55.6%と最多で、乳がんが2人と最多だった。死亡者の健康診断結果の解析では、循環器での死亡者にBMI≧25、血圧≧140/90mmHg、総コレステロール値≧220mg/dl、糖尿病域、メタボリックシンドローム該当者、喫煙者が多い傾向が認められ、在職者の死因と関連性がある可能性が示唆された。 平成20年度から実施してきた調査結果を統合したところ、専属産業医が健康管理を担当する事業場における在職死亡率は、全体的に減少傾向を認めた一方で、自殺の割合が増加し、特に30歳代で顕著であった。
|