研究課題
アレルギー疾患を有する児童は、肥満の合併リスクが高いことが示されている。また自閉症スペクトラム障害(ASD)を有する児童もアレルギー疾患およびやせ・肥満の合併を指摘されている。そこで、今回の研究では、アレルギー症状に対するASD傾向および体格の関連について調査した。石川県志賀町の幼稚園および保育園計7校に在学する未就学児417人の保護者を対象とし、自記式の質問紙による調査を行った。ASD傾向のスクリーニングには、対人コミュニケーション質問紙(SCQ: social communication questionnaire)を用いた。SCQ得点11点以上の児童をASD傾向ありと定義した。体格は、性別・年齢別に定義されたBMIのカットオフ値を用いて、やせ、普通体重、過体重を定義した。有効回答数は337(80.8%)であった。SPSS第22版を用いて、カイ二乗検定および多変量ロジスティック解析を実施した。ASD傾向ありの該当者は15人(4.5%)存在した。アレルギー症状を有した者は、喘息は50人(14.8%)、アレルギー性鼻炎は18人(5.3%)、アトピー性皮膚炎は38人(11.3%)であった。ASD傾向ありに該当した者は、アトピー性皮膚炎の症状を有した者では5人(13.2%)存在したのに対し、症状を有さない者では10人(3.3%)であり、有意な差が認められた(P=0.018)。ASD傾向とアトピー性皮膚炎の間には有意な正の関連性(オッズ比3.84、95%信頼区間[1.20-12.24])が認められた。また、喘息と過体重の間には有意な正の関連性(オッズ比2.37、95%信頼区間[1.02-5.51])が認められた。以上より、アトピー性皮膚炎とASD傾向、および喘息と過体重の関連性が確かめられた。アレルギー疾患・ASD・肥満の関連性を、さらに大規模な研究で明らかにしていく必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究は幼児のこころの健康の関連因子を明らかにするためのコホート研究であり、食傾向とアレルギーを中心とした解析によって、関連因子の同定に一定の成果を得た。
現在、これらの因果関係を明らかにするためのコホートをさらなる疫学研究によって解析中であり、子どものこころの健康に対する、より早期発見のための妥当性の高い診断ツールの開発と早期介入によるサポート体制の確立を行う必要があり、食を中心とした生活習慣改善による予防法を開発する予定である。
幼児用食事調査についての追加調査の終了が予定期間(平成27年度中)を過ぎたため、その追加調査の実施に必要な支払いに次年度使用額が生じた。
コホート研究を予定通り遂行する。
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Health
巻: 8 ページ: 116-124
10.4236/health.2016.81014.