研究課題/領域番号 |
25460834
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
勝川 千尋 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (20183725)
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研究分担者 |
高橋 和郎 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, その他 (10171472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイコプラズマ / 薬剤耐性 / マクロライド / GENECUBE / 23SrRNA / MLVA法 |
研究概要 |
マイコプラズマ肺炎は2011年後半から2012年にかけて大きな流行が見られたが、研究を開始した2013年は激減、8医療機関で36名の患者検体の収集にとどまり、当初予定した検体数200を集めることはできなかった。36検体中陽性は6検体であり、二層培地を用いた培養法によりそのすべての検体から肺炎マイコプラズマを分離できた。 今後のマイクプラズマの流行が予測できないこともあり、さかのぼり調査として、2011年および2012年のマイコプラズマ感染または百日咳感染疑い患者保存検体219検体からの肺炎マイコプラズマの検出を試みた。その結果、38検体がGENECUBE法で陽性となり、培養検査により26株の分離菌株を得ることができた。 肺炎マイコプラズマ陽性44検体中、マクロライド耐性は35株(80%)であり、大阪でもマクロライド耐性化が進んでいることが判明した。これらの菌株についてはマクロライド耐性に関与する23SrRNA遺伝子の塩基配列の解析を実施、耐性菌については耐性に関与する部位の塩基置換を確認、その多くは2063番目の高度耐性に関与する変異(A→G)であったが、GENECUBE法では判別することができない中度耐性に関与する変異(A→T)も見つかっている。 肺炎マイコプラズマの型別法として、わが国ではP1遺伝子による型別法が実施されてきたが、この方法には型別できる型が少ないという欠点があった。そこでMLVA法(Multi-locus VNTR analysis)の導入を試みたところ、より詳細な型別が行える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者発生の減少により、当初予定した検体数の確保はできなかったが、以下の基本的な技術を導入することができ、今後の研究の進展に向けた準備が整った。 1、分離培養法の検討:二層培地の導入により、核酸診断を上回る培養検査結果を得ることができ、今後のマイコプラズマ流行に備えた菌株分離法を確立できた。 2、23SrRNA遺伝子の塩基配列の解析を行うことにより、GENECUBE法では識別し得なかった塩基置換を確認でき、より詳細な解析を行えるようになった。 3、MLVA法の導入によりこれまで以上の詳細な系統鑑別ができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き各医療機関での検体収集を継続するとともに、分離菌については型別、薬剤耐性に関与する遺伝子変異の特定、薬剤感受性試験を実施、菌側からの解析を充実させ、臨床的特徴および感染様式等との関連性を探る。 肺炎マイコプラズマの薬剤感受性に関しては標準法は確立されておらず、その実施法から検討する。発育が非常に遅いマイコプラズマでは感受性ディスク法や寒天希釈法の実施は難しく、液体希釈法について検討していくことになるが、菌の発育を目で見ることができないマイコプラズマではpHの変動でその発育を判定することになり、薬剤ごとの培地の調整法から検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はマイコプラズマ感染症の非流行期となり、目的とした検体数が確保できず、検査費用等がかなり減少した。菌の疫学解析をより詳細に行うなど、研究の進展に向けた取り組みも行ったが結果的に余剰金が生じた。 本年度の流行状況は予測ができないが、引き続き検体採取に努めるとともに、菌側からの解析を充実させる。 1、前年度からの継続事項として、マクロライド耐性に関するGENECUBE法によるSNIP解析に加え、変異を特定するため23SrRNA遺伝子の塩基配列の解析を実施する。これによりGENECUBE法では特定できない領域の変異も検出できるようになり、より詳細な解析が行える。2、分離菌の遺伝子解析法として有用であることが示唆されたMLVA法を全分離株について実施する。3、マクロライド以外の耐性が見つかった場合、そのメカニズムについて検討する。
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