マイコプラズマ肺炎は2011年から2012年にかけて全国的な流行が見られたが、本研究を開始した2013年からは激減、2014年から2015年にかけても非流行期が続いた。しかし大阪では2015年後半から患者数の増加がみられ、本年度は281名のマイコプラズマ感染疑い患者から、158株の肺炎マイコプラズマ菌株を分離できた。前年度から引き続いて分離菌の解析、薬剤感受性試験を実施、結果的に非流行期から流行期にかけての流行菌の変遷を観察することができた。ML系抗生剤に対する耐性率は2013年66.7%、2014年73.3%から2015年は43.0%に低下、P1遺伝子による型別ではI型主流から、I型、II型、IIc1型が混在する流行にシフトしていた。耐性と菌型の相関を見ると、I型のML系耐性率の減少はなく、ML系感受性の他の型の菌へのシフトであった。ML系以外のTC系、NQ系薬剤 に対する最小増殖阻止濃度を測定したところ、その値に経年変化はなく耐性化の傾向は認められなかった。 ML耐性菌による感染と重症度との関連を解明するため、患者ごとの検出菌のML耐性の有無および治療経過を調査、さらに医療機関ごとの検出マイコプラズマの耐性状況を比較・検討した。その結果、一次医療機関の検出菌のML耐性率は低く18.2%であったのに対して、二次医療機関では56.4%と高率であった。この結果は一次医療機関受診患者では短期間のML系薬剤の投与で解熱する患者が多く治療期間も短かったのに対して二次医療機関ではML系薬剤での治療が効果を発揮せず重症化し入院する患者が多いことの裏付けとなる結果であった GENECUBEによる患者検体の迅速マイコプラズマ遺伝子検出検査はマイコプラズマの遺伝子検出とともにML耐性の有無も判定する。迅速な結果の還元により耐性のない薬剤の投与の選択も可能となりその有効性を証明できた。
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