平成27年度には、あらたに加硫促進剤(非ラテックス製サージカルグラブの製造において、柔軟性を高める目的で添加される物質で接触性皮膚炎の原因物質の一つとされる)を使用していないあらたな非ラテックス製サージカルグラブが使用可能となることが判ったため、サージカルグラブの非ラテックス化を保留していたが、 平成28年度は、それまでの年度に実施した職員対象のアンケート調査および手術室での非ラテックス製サージカルグラブのモ ニター調査結果に基づき、院内の医療材料委員会へ申請して、非ラテックス製サージカルグラブの定数配置(正式購入)を行うことが出来た。これにより、ラテックスアレルギーに起因する有害事象(アナフィラキシーショックおよび接触性皮膚炎)の発生は理論的にはゼロになった。 一方、それ以前に院内で発生したアナフィラキシーショック事例について、電子カルテ上の病名登録およびアクシデントレポートシステムより抽出する作業を行った。その結果、電子カルテ上で診療情報の検索が可能であった2012年以降に、院内で明らかなラテックスアレルギーの新規事例は0件であった。 以上より、本研究において、当初予定していたラテックスアレルギーに対する認識調査や非ラテックス製グラブとの比較検討は実施でき、さらに、職場環境での医療材料の非ラテックス化を促進することが出来た点で臨床的意義を認めるが、もう一つの課題であった非ラテックス化による有害事象発生の抑制効果が購入費用上昇分を凌駕するか否かについては、変更前にも有害事象が発生していなかったため、比較検討することが出来なかった。電子カルテ導入以前に患者データについては、検索機能がないため検討に必要なデータ抽出が出来なかったことも背景にあると考える。
|