研究課題/領域番号 |
25460849
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
萬 知子 杏林大学, 医学部, 教授 (40210801)
|
研究分担者 |
森山 潔 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296717)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中心静脈カテーテル関連血流感染症 / 集中治療室入室日数 / カテーテル挿入日数 / 大腿静脈 / サーベイランス / アパッチ2スコア / 大学病院 / 集中治療室 |
研究実績の概要 |
本研究の目的と意義:我が国における中心静脈カテーテル関連血流感染の実態把握のための大規模調査は有効なものは行われていない。ましてや、カテーテル関連血流感染の防止策を広めるための啓発活動も進んでいないのが現実である。そこで、集中治療室におけるカテーテル関連血流感染を減らし、血流感染に関連した死亡率をゼロにするために、医療従事者への血流感染予防策の教育方法を確立し、予防策を実行する。その成果を数値として明らかにし、国内に広め、多施設研究への足掛かりとすることが本研究の目的である。 平成25年度の研究実施は、①中心静脈カテーテル関連血流感染に関する医療従事者向けの情報提供、②感染予防バンドル施行のチェック、③カテーテル感染率の把握、④データ解析であった。計画していた中間報告は26年度に行った。 平成26年度の研究実地計画は、①サーベイランスデータ集積の継続、②教育活動、③予防策の介入、④成果報告である。その成果は、①について:初年度に構築したデータ集積のシステムが順調に稼働しており、必要データは継続的に集積されている。②③について:カテーテル感染判定に必要な血液培養の提出が不備などに対しての警告と指導、感染率およびその関連因子について、院内で定期的に報告し、注意喚起を促し、予防策の徹底を促進した。④について:海外の学会で成果報告を行った。今回の発表では、以下の報告を行った。重症患者を多く受け入れる大学病院の集中治療室における、中心静脈カテーテル関連血流感染に強く関連する因子は、患者の重症度、集中治療室滞在日数、大腿静脈カテーテル挿入であり、予防策バンドルを徹底していても、重症患者では感染率をゼロにすることは難しいことがわかった。予防策バンドルに加えてさらに有効な予防策が必要であると考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、集中治療室における中心静脈カテーテル関連血流感染の現状把握として、厳格なサーベイランスの施行を院内で軌道に乗せることができた。また、サーベイランスでは測れない詳細のデータ収集のシステムも構築し、データの収集は完璧に行うことができた。 平成26年度は、計画通り、サーベイランス開始から6か月間のデータを解析した。その結果、カテーテル感染に関連する因子は、集中治療患者の重症度、集中治療室滞在期間、大腿静脈へのカテーテル挿入であることがデータ解析で明らかになった。海外での同様な報告は散見されるが、国内でこのような明らかなデータは公表されていない。この結果は、2015年3月に開催されたInternational Anesthesia Research Societyで発表した。26年度の成果として計画通り順調に研究遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
上記、研究概要に示したように、平成25年度、26年度の研究計画は順調に実施できたと考える。成果の中間報告として、海外の学会で発表した内容は、集中治療室の中心静脈カテーテル関連血流感染症は最初の3か月間で、1000日あたり3.5、次の3か月では3.4であった。国際的にはこれは、1ないしは2が許容範囲であるとの報告もある。しかし、重症系集中治療室での報告に限ると、感染率は6ないし9という報告もある。当院は重症度の高い集中治療室であるので、感染率が高いとはいえないかもしれない。しかし、それだからこそ予防策のさらなる拡充が重要となる。このことが確認されたことは本研究が有意義であるという方向性を示している。本研究の計画どおりに研究推進していく方針で、基本的には、申請時の実施計画に沿ったもので行うことでよいと考えている。具体的には、今後は、26年度で行った介入策の見直しと、さらなる介入策とその教育の拡大方策の構築も重点的に取り組む。また中間報告後のデータ解析とその報告を学会発表および論文として発表する。それにより、共同研究を踏まえた他施設との交流を図りたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外学会発表が年度末になり、クレジット支払の証明書の発行も年度末となったため、26年度中の支出とならなかったが、手続きはすでに完了しているので、27年度の早期に支出予定である。 論文作成にかかる費用の支出が最終年度となるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
海外学会発表に関わる費用(旅費など)、論文作成に関わる費用(英文校正など)、データ入力事務要員のための人件費などの使用計画を立てている。
|