本研究の目的は、処方せんが持つ患者への投薬、薬剤の調達、会計の多目的性に着目して、医師、看護師、薬剤師、会計担当者の行為とそれを行うために必要な情報との連関を時間的相関関係から可視化することにより医療安全への問題解決方法を提案することである。平成27年度に実施した内容は下記のとおりである。 (財)日本医療機能評価機構で公開している報告書データにより、処方せんの多目的性に関するヒヤリハット事例を抽出し、時間軸に沿ってどの行為で発生しているか、起因している情報はどれかについて分析を行った。さらに、処方せんの目的である投薬、与薬、薬剤調達、会計行為とそれを行うために必要な情報との連関について分析を行った。分析結果として、行為では、過剰投与、無投与の割合が高く、次いで中止投薬の割合が高かった。起因した情報については、服薬時間の割合が最も高く、次いで1回投与量、服薬終了日・中止日、服薬開始日・開始時間、投与方法の割合が有意に高いことが認められた。さらに、行為と起因した情報との関連を検討した結果として、無投与の行為では、服用開始日・開始時間の情報との関連が高く、投与忘れの行為では、服用時間の情報との関連が有意に高いことが認められた。分析結果をマッピングし、行為と起因した情報の連関を可視化した。 本研究では、処方せんの多目的性に着目し、薬物治療における行為と必要な情報との連関を時間軸に沿って可視化し明らかにする分析の手法を提起した。平成27年度以降においても、調査件数を増やした詳細な分析を進めるとともに、分析方法の有用性について検証を行うことが必要であると考えられる。
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