研究課題/領域番号 |
25460861
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中島 たみ子 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40008561)
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研究分担者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30205512)
佐野 利恵 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70455955)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ABO遺伝子 / 転写因子 / エンハンサ- / 変異型 / 転写調節 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
これまで申請者らは、ABO遺伝子第1イントロン内5.8kb(+5.8-kb site)に血球系特異的な転写活性化領域(エンハンサー)を見出し、Bm型では領域内の約5.8kbの塩基の欠損(Bm5.8遺伝子)や一塩基置換(Bm+5890T>G遺伝子)が認められ、Am型でもエンハンサー内の23bpの欠損が認められ、+5.8-kb siteがAやB遺伝子の転写活性に関係していることを明らかにした。今回新たに、A3型ではA alleleの+5.8-kb site内に新規の1塩基置換(5893G>Aまたは5909A>G)が、B3型ではB alleleのプロモーター内に新規の1塩基置(-77C>G)がそれぞれ同定され、reporter assayの結果から、これらの変異がABO遺伝子の転写活性を低下させている事が確認された。また、Bm型500例以上の遺伝子解析の結果、殆どは+5.8kb欠失(Bm5.8)であるが、新たに+5.8-kb site内に3.0kbの欠失をもつ、Bm型(Bm3.0)を同定した。Bm5.8とBm3.0についてABO遺伝子第1イントロンの全塩基配列を比較した結果、この2つの遺伝子は共通の欠失領域をもつ1つの遺伝子から生じたものでなく、独立した由来であると考えられた。また、Bm、B、O型の赤血球系前駆細胞(CD34陽性細胞)について、ABO遺伝子等の発現解析を行ったところ、通常のBやO型では、より未分化な細胞で最も強く、以後減少し、Bm型ではいずれの分化段階においても、allele特異的RT-PCRにてO遺伝子は発現しているが、B遺伝子の発現は認められず、細胞培養上清のB合成酵素活性も検出できなかった。また、B型赤血球系前駆細胞を用いたChIP assay で、+5.8-kb siteにRUNX-1、GATA-1/2が共に結合することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、AやB抗原が減弱しているABO式血液型亜型では、Bm型をはじめ、Am型やA3型でも、+5.8-kb site内のGATAやRUNX-1転写因子結合サイトを含む塩基配列の欠損や塩基置換が原因で、ABO遺伝子の転写活性が低下し、AやB抗原の発現が減弱していることが確認された。B3型では、プロモーター内の1塩基置換も同定され、これらの亜型の遺伝子検査が可能となったことから、これまで曖昧であった亜型の血液型判定が正確にできるようになった。ABO遺伝子は、未分化の細胞で最も強く、分化とともに発現が低下しており、この発現には、転写因子GATA-1/2やRUNX-1が関与していることも明らかになった。 これに対して、Bm型ではいずれの分化段階においても、B遺伝子の発現は認められないことをはじめて証明した。なお、転写因子RUNX-1は急性骨髄性白血病の患者においてしばしば相互転座のために変異することが知られており,白血病患者における血液型変換の新たな機構の解明が可能になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ABO式血液型亜型において、赤血球系抗原のみ減弱が見られる血液型の解明はされたが、上皮系細胞も同時に減弱しているBx型やAx型等の亜型の転写調節機構は未だ不明である。上皮系細胞の発現機構を解明するため+41.0kb 領域とその周辺について検討した結果、reporter assayで+36.0kb領域に強い活性が認められ、ABO遺伝子下流域であるこの領域と上流にある血球系特異的な +5.8-kb siteやプロモーターとの関連性を、Chromosome Configuration Capture法やfluorescence in situ hybridization (FISH)法などを用いて検討する。また、この領域の遺伝子発現に及ぼす影響を調べるため、CRISPR-Cas9システムやTranscription Activator-Like Effector Nucleases(TALEN)法等のゲノム編集で、ゲノム配列の削除や置換したプラスミドを作製したり、また転写因子ノックダウン細胞を作製し、ABO遺伝子発現の変化や転写活性の変化を観察し、実際の転写調節機構を統合的に解明する。また、AやB抗原の減弱が見られる白血病患者について、遺伝子解析を行い、ABO式血液型と疾患との関連性を明らかにして行く。この他、+5.8-kb siteにおけるハプロタイプをすでに100例以上調べ、ABO遺伝子との関係性が分かってきているので、更に検討を進める。
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