研究課題/領域番号 |
25460863
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
上村 公一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30244586)
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研究分担者 |
船越 丈司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40444715)
秋 利彦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (60304474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒ素 / Parkin / ユビキチン-プロテアソーム系 |
研究実績の概要 |
亜砒酸(Arsenic trioxide、ATO)は毒物として知られるが、薬物として用いられてきた歴史もある。近年、急性前骨髄球性白血病再発例の治療に使われるが、心電図異常や重篤な不整脈等の心毒性がある。若年性パーキンソニズムの原因遺伝子の1つであるるParkinは、ミトコンドリア品質管理に関与するE3ユビキチンリガーゼであり、ミトコンドリアが障害されるとミトコンドリアに移行し、多くの蛋白質をユビキチン化することで、プロテアソームおよびオートファジーによる障害ミトコンドリアの除去を促進するとされる。本研究ではマウス心房由来HL-1細胞を用い、ATO誘導性心筋障害(細胞死)に対するParkin、ユビキチン-プロテアソーム系(Ubiquitin-proteasome system、UPS)およびオートファジー-リソソーム系(Autophagy-lysosome system、ALS)の役割を検討した。前年に引き続き、ミトコンドリア障害を介したアポトーシスである細胞死について詳細に検討してきた。 細胞内ユビキチン化タンパクの変動について、K48結合型ポリユビキチン鎖はプロテアソームによる分解のシグナル、K63結合型ポリユビキチン鎖はリソソームによる分解のシグナルと考えられ、抗マルチユビキチン鎖抗体(FK2抗体)、抗K48ポリユビキチン鎖抗体、抗K63ポリユビキチン鎖抗体すべての解析において、ATO用量依存的にユビキチン化タンパクの蓄積が認められ、その傾向は6 µM ATO以上で著明であった。 プロテアソーム活性はATO用量依存的に上昇していた。さらに、ATO曝露によるプロテアソームマーカーLMP2-GFPのミトコンドリアへの移行も確認された。ATOの心毒性において、ミトコンドリア品質管理ひいては細胞の恒常性維持のため、UPSおよびParkinが重要な役割をもつ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は学会で発表し、学術論文に掲載された。学術論文は大学院生の博士論文となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、ATOによる心毒性に対してParkinが活性化することを示した新規の報告である。近年Parkinは、家族性Parkinson病の分子病態機序の解明を目的とした研究に伴い、その詳細な活性化機構が明らかになりつつあるが、今後研究が進めば、Parkinを標的とした治療戦略により、ATOの心毒性による治療中断を回避できる可能性が期待される。 最終年度はラットの亜ヒ酸投与モデルを作成し、培養細胞での研究成果をもとに、心臓などの臓器障害について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者が都合により、本年度の研究費を使い切ることができなかった。 教室運営費も研究費として使用しているため、本研究の遂行に問題はない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、本研究の研究費として使用する。
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