研究課題/領域番号 |
25460867
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
南方 かよ子 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (70115509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白金 / 金 / mass spectrometry / MALDI / 組織 |
研究概要 |
MALDI-TOF-MS を用いた組織中の金、白金の定量法の開発 目的:MALDI-TOF-MS 法は生化学分野で近年急速に普及してきた方法で、laserでまずmatrixがイオン化され、そのエネルギーが分析種に移り、分析種がソフトにイオン化される方法である。金属類のMALDI-TOF-MSによる研究は金属酸化物について酸化還元のメカニズムについての報告がなされてはいるが非常に高濃度の金属を対象としている。我々は非常に低濃度の組織中の金(Au)と白金(Pt)をdiethyldithiocarbamate (DDC) によって錯体としMALDI-TOF-MSで定量する方法を考案した。 方法:組織5mgを硝酸により湿式灰化する。DDCを添加し Au-DDC錯体とPt-DDC錯体とを液ー液抽出する。溶媒を蒸発させ、matrix剤としてcyano-4-hydroxy cinnamic acid を溶解させたアセトニトリル溶液に溶解し、ターゲットウエルに塗布、乾燥後、reflector type TOF-MS, QSTAR Eliet Hybrid (AB SCIEX) にて測定した。 結果:Au-DDC錯体とPt-DDC錯体はm/z=493とm/z=639とに観察された。Auは1 pg, Ptは10 pgが検出限界であった。この方法を Ptを含む抗がん剤であるシスプラチンの過剰投与で死亡された例について、11種類の組織中の薬剤に由来する PtをAuを内部標準として定量した。 総括:この結果を2013年国際法中毒学会にて発表し、Analytical Bioanalytical Chemistry (2014) 406:1331-8にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. 26年度に予定していた金属群のMALDI-MS法による高感度分析法の開発は完了した。 2. 25年度に予定していたベンゾジアゼピン群のMALDI-MS法による分析方法の開発研究をすすめていたところ、MALDI-TOF-MS装置においては今まで経験した他のMS装置では設定することがなかった「引き込み電圧」が感度に多大な影響を与えることに気付いた。そのためこのベンゾジアゼピン群関連の実験をやり直しているが、ほぼ完了に近づいている。 3. 27年度に予定していた脱法ドラッグ群のMALDI-MS法による高感度定量法の開発は途中まで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 25年度に予定していたベンゾジアゼピン群(10種類)のMALDI-MS法による分析方法の開発は上記のごとくほぼ完了に近づいているので、これを完成させる。 2. 27年度に予定していた脱法ドラッグ群(カチノン群4種類、アンフェタミン群4種類)のMALDI-MS法による高感度定量法の開発も途中まで進んでいるので、これらを完成させる。 3. 脱法ドラッグ群は次々と新しい薬剤が出回り、当法医学教室での解剖例にても未報告の物質が検出される。これらの検出が望まれるので、MALDI-MS法による高感度分析法の開発を追加する。 4. 抗うつ剤の中毒例も多いので、これらの分析方法の開発も追加する。
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