研究実績の概要 |
血中の4種のアンフェタミン類のMALDI-MSによる高感度定量法の開発 目的:アンフェタミン類{amphetamine (A), methamphetamine (MA), 3,4-methylenedioxy- amphetamine (MDA), 3,4-methylenedioxymethamphetamine (MDMA)}は中枢神経興奮薬物の一種であり, 濫用により依存性を生じ, 過剰摂取による中毒死の報告も多い。常用されているGC-EI-MS法ではfragment ion となり易く, 分子イオンの検出および気化を促進するために誘導体化を必要する。MALDI-MS法はソフトにイオン化され、分子イオンが検出されやすいという利点がある。しかしMALDI-MSによるアンフェタミン類の血中, 尿中の定量については尿中のMDMAについての報告があるのみでその定量域は0.1 ― 100 μg/ml であり感度が非常に低い 。我々は血中の4種のアンフェタミン類のMALDI-MSによる高感度定量を試みた。 方法:血液20 μlに 水50 μl, 1 M 炭酸カリウム溶液8 μl, 1Mクエン酸溶液0.8 μlを添加した。1-chlorobutane (CB) を200 μl添加し, 1分間vortex mixした。10,000 Gで3分間遠心後, CB層160 μlを別容器に採取しCBを蒸発させた。matrix剤α-cyano-4-hydroxy cinnamic acid を含むアセトニトリル溶液16 μlで残渣を溶解し, その2 μlをターゲットウエルに塗布した。TOF-MS, QSTAR Eliet Hybrid (AB SCIEX) にて測定した。 結果:血中定量域はA, MDAでは30 ― 500 ng/ml, MA, MDMAでは3 ― 50 ng/mlであり, 高感度定量が可能であった。この方法を用いて解剖2例における血中, 尿中のA, MAの定量をした。 総括:この結果を2014年法中毒学会で発表し、Forensic Toxicology (2014)32:299-304にて報告した。
|