研究実績の概要 |
血液中のピロリジノカチノン誘導体のMALDI-Q-TOF-MSによる分析法の開発 目的:アミノ基が環状のピロリジル基を有するカチノン誘導体類ではそうでないカチノン類よりも脳関門通過性が高くなり、神経作用が亢進する。PVPのphenyl基が硫黄を含む5員環のthiophenyl基に置換したPVTの他にPV9, PV8, 4F-PVP, MPHP, 4F-PV9が新たなdesigner drugとして流通し、また当教室ではPV9による中毒事例に遭遇した。血中のこれらの薬物のMALDI-Q-TOF-MSによる分析を試みた。 方法:血液20μlに内部標準1μl、緩衝溶液49μl、240μlのクロロブタン(CB) を添加し、薬物を液 ― 液抽出した。CB層192μlを採取し蒸発させた。matrix 剤CHCAを0.7mg/ml含むアセトニトリル、エタノール、水の混合溶液16μlで残渣を溶解し、その2 μlをターゲットウエルに塗布した。乾燥後355 nm radiation, 20 cycles at 100Hzで励起し、reflector type TOF-MS, QSTAR Eliet Hybrid にて測定した。 結果:本研究以前では装置の標準設定に従いdelayed extraction voltage 60 V, energy 8 μJで測定していたが、今回はそれらを 20 V, 3.4 μJとした。その結果、[M+H] の割合は増加し、ノイズは減少した。検出限界は1ng/ml、定量濃度は2― 100ng/ml。PVPを内部標準として、PV9による中毒事例における血中、尿中濃度の測定をした。これらの結果を2015年国際法中毒学会(TIAFT)で発表し、Forensic Toxicology (2015) 33:148-154 にて報告した。
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