研究実績の概要 |
1.研究の意義:動脈硬化症における慢性心理的なストレス・アルコールが動脈硬化進行にもたらす影響を確認し,アルコール・心理ストレスによる動脈硬化巣(プラーク)不安定化機転を解明する基礎研究である. 2.研究の内容:(1) 先天的動脈硬化マウス36匹と野生型マウス34匹を28週間と1年間にわたって追跡,心・血管イベントの発症を確認し,慢性心理的ストレスによる動脈硬化進展と心・血管イベント発症との関連について検討した.(2) 先天的動脈硬化マウスを動脈硬化誘発飼料単独(6匹)またはアルコールと併用(8匹)にて16週間飼育し,慢性アルコール投与によるプラーク脆弱化の促進について検討した. 3.研究の結果:(1) 心理的ストレスを一ヶ月負荷した先天的動脈硬化マウスの28週間心・血管イベントフリー生存率は顕著に低下し,心理的ストレスを受けなかった先天的動脈硬化マウスの1年間心・血管イベントフリー生存率と同様となり,プラークの形成率は最大であった(学会発表1, 2).(2) アルコールと動脈硬化誘発飼料併用した先天的動脈硬化マウスでは,腹部大動脈内中膜複合体厚の増加および高脂血症を認め,腹部大動脈組織中の蛋白分解酵素 (MMP-9) 遺伝子発現量の増加が引き起こされ,低輝度プラーク(脆弱化プラーク)は見られた(雑誌論文,学会発表3). 4.研究の重要性:(1) 心理的ストレスは動脈硬化進行の促進を介し,心・血管イベントに対する強い関連因子であると考えられる.(2) 慢性アルコール投与は動脈硬化巣脆弱化を促進させる可能性が示唆された.
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