高齢者及び小児の身体的虐待死でみられた各臓器,特に肺への好中球浸潤は虐待ストレス等に基づく肺胞マクロファージからのHMGB1放出を発端として,HMGB1-TLR4-NF-kBシグナルを介して肺胞マクロファージから好中球遊走因子IL-8が誘導されることで生じることを免疫組織学的手法を用いて証明した。また,好中球だけではなく,肺胞マクロファージもMMP9, iNOS等の組織障害因子を産生することで,直接的に組織障害を促進する可能性が示唆された。以上の検討によって,虐待から好中球侵襲を経て臓器障害に至るまでの全容がほぼ明らかとなり,より正確な虐待の法医病理学的証明法の確立に向けて大きく前進した。
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