研究実績の概要 |
今年度は昨年度行った,実際の臨床検体として解剖時に採取された尿を用いて,従来法により,JCウイルスまたはBKウイルス陽性検体,陰性検体と判別した尿検体を用い,ランダムPCR法によりゲノムを増幅し,温度勾配ゲル電気泳動法によりゲノムプロファイリング(GP)を試みた.この結果,ウイルスゲノム以外の人ゲノムが混在する中で,ウイルス種特有の複数のSpiddosを同定することにより,ウイルス種の検出と同定ができることが明らかになった.以上の成果をThe Open Journal of Virologyに学術論文として発表した. これまでに多くの死体の血液検体を収集したことから,これらの検体を血液培養検査に出すとともに,17SrDNAをPCR増幅し,温度勾配電気泳動したところ,GPにて各種細菌類に相当するSpiddosを同定することに成功した.しかし,腐敗による細菌の発生は多種多様であり,多くの菌種を一度に同定することは容易ではないと考えられた.そこで,溺死の診断に絞って,水中の細菌と死体血の中の細菌のSpiddosが合致するか否かに絞って検討することとした. 死亡状況や,壊機法によって溺死と診断された症例の血液と,溺死ではない単なる水中死体や,陸上での死体から採取された血液と発見現場と推定入水現場の水を用いて,17SrDNAをPCR増幅し,温度勾配ゲル電気泳動を試みた.すると,溺死死体血と溺死現場水中に含まれる細菌DNAのSpiddosが一致することがわかった.その他の非溺死体血に含まれる細菌のSpiddosが合致しないことはもちろん,淡水や海水による菌種の違い,および水系や入水場所の違いも結果に反映しており,溺死の判定法として,GPによる微生物種の同定が有効な方法となりうるものと考えられた.最終年度に法歯科医学会で報告したが,現在,これらの結果を報告するために,論文を作成中であり,今年度内に学術雑誌に投稿する予定である.
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