研究課題/領域番号 |
25460879
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
長谷場 健 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50156329)
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研究分担者 |
秋元 敏雄 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30184112)
丸山 基世 日本医科大学, 医学部, 助教 (60709757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会医学 / アルコール医学 / アルコール代謝 / アルコール脱水素酵素 / ADH1 / ADH3 / アルコール性肝障害 / アルコール嗜好性 |
研究実績の概要 |
congenic13世代の各ADH遺伝子型マウスを作成し、Adh1-/-について10%Alc水慢性摂取実験(1ヶ月)をやり直したところ、Alc摂取群は水摂取群に比べて2倍以上のAlc代謝亢進が認められ(222.0mg/kg/h vs 99.0mg/kg/h)、さらに、この代謝速度は慢性Alc摂取Wild(480.4mg/kg/h)の50%弱に相当することがわかった。 慢性Alc摂取Adh1-/-は体重の増加が見られず、摂取3週目頃から死亡し始め、2ケ月までに全匹(10匹)死亡した。このことから、ADH1は長期の慢性Alc摂取を可能にし、Alcoholismを進展させる必須の因子であることがわかった。 10%Alcと水の2瓶法によるAlc嗜好性テストではAdh1-/-が最も高く(27.4%)、次にAdh3-/-(15.8%)で、Wild (5.4%)が最も低かった。一方、Alc摂取期間中のAlc水摂取量はAdh1-/-で少なく、ADH3-/-とWildでは差はなかった(2.2、3.1、3.3ml/day)。 10%Alc慢性摂取による各遺伝子型マウスの退薬症候はいずれも顕著なものは観察されなかった。 Wild、Adh3-/-に4ケ月間慢性摂取させ、4g/kgのAlcを急性投与した群(WE4g、A1E4g、A3E4g)と非投与群(WE0g、A1E0g、A3E0g)、さらに水摂取マウスにAlcを急性投与した群(WW4g、A1W4g、A3W4g)と非投与群(WW0g、A1W0g、A3W0g)に対して血液生化学的検査を行った。膵臓系酵素(amylaseおよびlipase)は慢性Alc摂取によってWildはで上昇したが、Adh3-/-では有意に低下した。ASTは水摂取マウスに急性投与した時はいずれの遺伝子型でも有意な上昇がみられたが、Alc慢性摂取マウスではAdh3-/-のみに有意な急性投与の効果がみられた。Total-CHOはWildで、F-CHOおよびLDL-CHOは全ての遺伝子型マウスで慢性Alc摂取による上昇がみられたが、HDL-CHOはWildのみに上昇がみられた。以上のように主要臓器のアルコール障害に各ADHが複雑に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで予定した研究計画は、再実験が必要なところもあるが、大凡順調に遂行されている。なお、慢性ALc投与4ケ月のWildにおける脂肪肝の形成が必ずしも十分なものではなかったので、新たに、慢性ALc投与1年を計画に加えた。そのため、今年度の研究計画にある臓器中EtOHおよびAcH濃度測定は割愛する予定。 なお、前年度報告書で、慢性アルコール(10%Alc水)摂取によるアルコール代謝の亢進はWildおよびAdh3-/-では見られたが、Adh1-/-には見られなかったと述べたが、このAdh1-/-群にはAdh1+/-ヘテロが混入していたことが判明した。そこで、各ADH遺伝子型マウスのback cross 回数をこれまでの9世代から13世代に引き上げcongenic マウスを完成させた。そして、Adh1-/-の慢性Alc摂取実験(1ヶ月)をやり直したところ、Alc摂取群は水摂取群に比べて2倍以上のAlc代謝亢進が認められ(222.0mg/kg/h vs 99.0mg/kg/h)、さらに、この代謝速度は慢性Alc摂取Wild(480.4mg/kg/h)の50%弱に相当することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実施報告で、10%Alc水を4ケ月間慢性摂取によって、Wildの肝には軽度の大型脂肪変性が見られたが、Adh3-/-ではその変化は微弱であったと述べた。このことは、ADH3がアルコール性脂肪肝(ASH)を促進する可能性を示唆するものであるが、Wildの脂肪肝形成がかならずしも十分なものではなかった。そこで、それを確かめるべく、現在慢性Alc摂取期間を1年に伸ばして同様の組織病理、代謝速度、血液生化学等の検査を行う予定である。また、今回非急性Alc投与群にはコントロールとして同カロリーのグルコースを投与したが、このグルコース投与が若干血液生化学データの影響を及ぼした可能性があり、必ずしも適切な急性Alc投与のコントロールではなかったので、今後のコントロールには無投与のマウスを用いる予定。 慢性Alc摂取によって亢進したAdh1-/-のnon-ADH1 pathwayの実態について、ADH阻害剤投与アルコール代謝実験ならびに主要臓器におけるADH1およびADH3の量的変動を免疫化学および免疫組織化学で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の秋元が都合により学会出張を取りやめたこと、研究代表者の長谷場が研究会に追加参加したことなどにより、次年度使用額9,327円のが出た。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額9,327円は、今年度の物品費に加算する。
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