研究実績の概要 |
先に、10%EtOH水4ケ月摂取[4M]のAdh3-/- (A3E)は Wild (WE)に比べて肝の大型脂肪変性が微弱であったと報告したが、ADH3のAlc性肝障害への寄与を明らかにするため、1ヶ月[1M]ならびに1年[1Y]のEtOH摂取条件を加え検討を行った。[1Y]では、肝のマクロ所見でWEがA1Eに比べ脂肪変性が強く、腫脹や結節様変性などが見られた。血液生化学検査では、WEで 水摂取(WW)に比べてASTならびにALTの上昇が見られたが、A3Eでは見られなかった。以上のことから、ADH3はAlc性肝障害の発症に関与することが示唆された。[1M]では、いずれの酵素活性も両マウス種でEtOH摂取の影響は見られなかった。一方、A1E はA1Wに比べてAST, ALT, CKの有意な上昇がみられた。また、EtOH禁断により激しい退薬症状が観察され、1ヶ月以上の摂取で死亡した。これらのことからADH1はBACを低下させることによってAlc性臓器障害および依存症発症を防御し、EtOH摂取の継続を可能にすることがわかった。EtOH4g/kg投与下でのAlc代謝速度(EDR:mg/kg/h)を4-methylpyrazole(4MP)投与の有無で検討した結果、[1M]でいずれのマウス種もEDRが増大し{WW:418.2±69.5;WE:553.7±25.1(32.4%)、A3W:449.5±9.7;A3E:576.0±32.7 (28.1%)、A1W:85.5±22.4 ;A1E:203.8±59.9(138.4%)}、A1の増大が2.4倍と著しかった。4MP感受性EDRはWWで59.4%、A3Wで69.8%、A1Wで12.3%を占めたが、WEでは57.2%、A3Eで77.0%、A1Eで53.2%となり、A3EでのADH1ならびにA1EでのADH3の寄与の増大が示唆された。
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