研究課題/領域番号 |
25460882
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
武藤 淳二 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (80432186)
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研究分担者 |
酒井 洋樹 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40283288)
佐々 悠木子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20582464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウイルス / 遺伝子 / 網羅的検出法 / PCR / シークエンス / 法医学 / 微生物 / 定量PCR |
研究実績の概要 |
一般に病原ウイルスの同定は、症状や病態から病原ウイルスを推定し、推定されたウイルス種を検出するため、ELISA等抗原抗体反応による検査やウイルス種に特異的な遺伝子を増幅するPCR検査などを行い、さらに増幅した遺伝子断片の塩基配列を確認して同定を行っているが、多大な時間と労力を要するのが現状である。本研究では、近年開発された網羅的ウイルス遺伝子検出法を応用し、法医学的試料からウイルスを迅速に同定するシステムを構築する。 これまで、猫の材料からウイルスを分離し、網羅的ウイルス遺伝子検出法を用いて猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスを検出し、PCR検査と増幅断片の配列確認によって検出したウイルスを猫ヘルペスウイルス・猫カリシウイルスと同定した。 平成27年度は、インフルエンザウイルスをマウスに接種し、死亡後に採取した組織からウイルス遺伝子を検出できるか検証を行った。マウスの死後1日間および3日間放置した後、解剖して肺を採取した。3日間放置したマウスからは、肺のほかに各種臓器を採取し、病理検査に用いた。1日間放置したマウスから肺のホモジネートを作製し、ホモジネートから抽出した核酸からcDNAを合成した。これを用いてインフルエンザウイルス遺伝子の定量PCRを実施したところ、cDNA液1マイクロリットル当たり80万コピー以上確認されたが、定量に用いる増幅産物が100bpと短かったことから、死後変化がウイルス遺伝子にもたらす影響を見るためには、400~500bpといった長い遺伝子断片を定量に用いる必要があると考えられた。 今後、比較的長い遺伝子断片を増幅する定量PCRの実験系を確立し、放置した日数によってウイルス遺伝子の定量値がどのように変化するか解析する。また、死後放置した組織から抽出した核酸を用いて、網羅的ウイルス遺伝子検出法によってウイルス遺伝子を検出できるか検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年4月に他部署への兼務を命ぜられ、研究以外の業務が多忙となり、合間に研究を進めていたが、研究計画に遅延が生じた。 平成26年度末に動物実験に着手し、マウスにインフルエンザウイルスを接種して、死後一定期間経過した死体から病理検査や遺伝子検査に用いる各種臓器の採取は完了しているが、上記の理由により、遺伝子検査に必要な死体組織からの核酸調製等が遅れている。 今年度、研究分担者と協力しながら研究を進め、研究計画を遂行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
インフルエンザウイルスを接種したマウスの死後、一定期間放置した死体の組織から核酸を抽出し、ウイルス遺伝子を検出できるか検証する。具体的には、比較的長い遺伝子断片を増幅に用いた定量PCRの実験系を確立し、死後放置した日数によってウイルス遺伝子の定量値がどのように変化するか解析する。また、網羅的ウイルス遺伝子検出法によって死後放置した組織からウイルス遺伝子を検出できるか検証する予定である。 このほか、手順の簡略化や迅速化などを検討するともに、多種多様なサンプルに対応できるよう必要に応じて変更を加えるなど法医学的試料に最適な方法を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年4月に他部署への兼務を命ぜられ、研究以外の業務が多忙となり、計画どおりに使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施できなかった実験、具体的には動物実験で得られた試料の遺伝子実験を行って、研究計画を遂行するために使用する。
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