研究課題/領域番号 |
25460886
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木澤 義之 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80289181)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アドバンス・ケア・プランニング / 医学教育 / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
今までの研究成果をもとに、わが国独自のアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:以下ACPと略)の実践プログラムを作成した。また、あわせてACPにあたる看護師やMSWを中心とした相談員に対する教育プログラム(臨牀倫理とACPコミュニケーションに重点をおいた)を開発した。国立長寿医療センターが行う、人生の最終段階における医療にかかる相談事業と連携・協力し、全国10施設の相談員に上記の教育を行い、実際に相談業務を行った。10医療機関の特定病棟に入院した患者は、2330名、そのうち適格基準に適合した患者は、928名で実際に相談支援を実施した患者は、397名(55.7%)であり、全入院患者の17%だった。患者の原疾患は悪性腫瘍が67名、非悪性疾患が330名であった。397人名の患者のうち、既相談の開始前に、アドバンスディレクティブをあらかじめ表明している割合は約10% であった。相談内容については、70%以上で相談された内容は望んでいる療養場所319例(80.4 %)、受けたくない医療行為を尋ねる288例(72.5%)であった。30-70%で相談された内容は、病状認識を尋ねる、不安、困っていることを尋ねる、大切にしていることを聞く、代理決定者を選定するなどであった。また、代理決定者の選定が165例(41.6%)の患者で行われた一方で、具体的な生命維持治療に関する相談(胃ろう、人工呼吸器の装着、心肺停止時の心肺蘇生など)は約10%に過ぎなかった。本相談では患者の望む療養場所と受けたくない医療行為について尋ねること、治療の目標を確認し、大切にしていることや不安にしていることを尋ねることに重点が置かれた。これらは、具体的な生命維持治療に関する選好を聞くよりも、今後の医療や療養の希望やその希望の背景にある価値観に焦点を置いた相談が行われた結果と解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アドバンス・ケア・プランニングの実践プログラム・教育プログラムが開発され、実際に相談業務が全国10か所で開始され、医療者、患者に対する調査が開始された。今後調査の内容を詳細に解析する予定である
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、国立長寿医療センターと連携協力して、プログラムの改善改定を行うとともに、さらに多くの医療機関で実践を行う。また、あわせて相談内容シート、患者・家族への調査用紙、相談にあたった医療従事者に対する調査の結果を分析し、ACPの実践が患者・家族に与えた影響、教育プログラムの学習効果、ACPの実践内容の詳細などを明らかにしてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、できる限りの節約と文書類のペーパーレス化を実践し、支出を大幅に減少することができた。また、学会や研究会の際に研究会議を行うことにより、旅費の支出を大幅に減少させることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は最終年度であり、現在の研究を継続するほか、研究データの整理・分析を行うため、人件費が予定よりかかることが予想され、次年度使用額を充当することを考えている。
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