研究実績の概要 |
アルツハイマー病の主たる病理所見は、アミロイドβ蛋白により形成される老人斑と高度にリン酸化したタウ蛋白より構成される神経原線維変化である。ADの危険因子は2型糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病であることが知られている。タウオリゴマーが惹起する神経細胞死、タウ重合促進を誘導する分子メカニズムにつき、神経系細胞にTET-OFF誘導細胞を導入し、検討した。さらに、本分子機構に基づいた新規薬剤の評価系を構築することを目的とした。TET-OFF誘導系を導入した神経系細胞を用いた検討により、細胞画分法により抽出したサルコシル不溶性画分のウエスタンブロット法にて120kDa, 180kDa, 240kDaの分子量のオリゴマータウの形成に成功した。なお、これらの分子はオリゴマータウを特異的に認識するTOC-1(tau oligomer complex-1)抗体( Michigan 州立大学Kaanan博士より供与)陽性であった。また、ドットブロット、および免疫組織学的検討でもTOCI陽性となるタウオリゴマーの形成が証明された。また、タウオリゴマーが惹起する細胞死に関しては、caspase3の活性化、ならびにATP assayを用いた検討により生存細胞数の減少が示された。新規薬剤の評価系として、TET-OFF誘導系を導入した神経系細胞を用い,我々は高脂血症治療薬ピタバスタチンがリン酸化タウを著しく減少させる効果を示してきた(Neurobilo aging 2012)。今回、2型糖尿病治療薬ピオグリタゾンによりリン酸化タウの減少効果が示された(in submission)。またクリオキノール、さらにはRho-kinase ROCK阻害薬の投与によりリン酸化タウ、ならびにタウオリゴマーの減少効果が示された。現在は頸動脈コイルを用いた慢性脳低灌流マウスモデルを用い、脳虚血がタウリン酸化亢進、ならびにオリゴマー形成促進に働く機序につき検討を行っている。
|