研究課題/領域番号 |
25460899
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
杉本 利嗣 島根大学, 医学部, 教授 (00226458)
|
研究分担者 |
金沢 一平 島根大学, 医学部, 助教 (50452553)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インクレチン / GIP / GLP-1 / DPP-4 |
研究実績の概要 |
【目的】インクレチンシグナルの骨代謝に及ぼす影響を検討する。 【方法】①細胞培養実験によりGIP、GLP-1投与による骨芽細胞分化、骨細胞機能への影響を検討する。②マウスにDPP-4阻害薬を投与し、骨構造への影響を検討する。③糖尿病患者におけるDPP-4あるいはDPP-4阻害薬の骨代謝、骨折リスクへの影響を検討する。 【結果】①未分化間葉系細胞ST2、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1、骨細胞様細胞MLO-Y4を用いて、GIPとGLP-1受容体の発現を検討した。ST2にはGLP-1受容体が、MC3T3-E1とMLO-Y4にはGIP受容体が発現していることをRT-PCR法、DNAシークエンスにて確認した。ST2の培養液にGLP-1あるいはexendin-4を添加し、骨芽細胞分化マーカーや石灰化染色を行ったが明らかな影響は認めなかった。MC3T3-E1にGIPとD(Ala-2)GIPを添加し、骨芽細胞分化マーカー、石灰化染色を行ったが明らかな変化は認めなかった。また、MLO-Y4にGIPとD(Ala-2)GIPを添加し、RANKL、SOST、OPG発現への影響を検討した。real-time PCRではRANKL発現が抑制される傾向を認めているが、追加検討を行っている。②alogliptin含有食を作成し、現在マウスに経口投与しながら飼育中である。③血中DPP-4濃度と糖代謝・脂肪指標との関連、骨代謝指標と椎体骨折との関連性を検討した。血中DPP-4濃度は内臓脂肪と有意な正の相関を認め、さらにDPP-4高値が椎体骨折リスクの上昇に関連していることを明らかにした。このことから、内臓脂肪肥満が血中DPP-4濃度上昇、インクレチン作用減弱を介して骨代謝に関連している可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、培養実験をスタートさせ、インクレチンは間葉系幹細胞ST2と骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞には明らかな影響を与えないことを認めた。現在、骨細胞様細胞MLO-Y4への影響を検討中である。 動物実験については、学内の実験承認を取得し、現在DPP-4阻害薬alogliptinを投与しながら飼育を行っているところである。平成27年度中には骨を採取し、骨構造について検討できると考えている。 臨床研究については、学内倫理委員会の承認を得たのち、糖尿病患者血清よりDPP-4濃度を測定し、内臓脂肪肥満では血中DPP-4濃度が高く、さらに椎体骨折リスクも高いことを明らかにした。これらの結果は国内・国際学会での報告と論文作成を行っているところである。以上より、本研究プロジェクトはおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
培養実験については、予想していた結果とは異なるが、ST2細胞とMC3T3-E1細胞へのインクレチンの影響については結論を得たと考えている。本年度はMLO-Y4細胞への影響について計画通りに進めていく予定である。 動物実験については準備が整ったところであり、本年度は結果を得るための実験を行える予定である。 臨床研究については、血中DPP-4濃度と骨折リスクとの関係を明らかにできたので、学会報告、論文作成を行うこととしている。また、今後はDPP-4阻害薬内服による骨代謝への影響についても検討を行うため、患者のエントリーを進めているとことである。
|