研究課題/領域番号 |
25460900
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山本 昌弘 島根大学, 医学部, 助教 (50346392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スクレロスチン / 2型糖尿病 / 骨質 / 骨脆弱性 / Wnt/β-catenin経路 |
研究概要 |
我々は骨密度が高くとも骨折リスクの増加のある2型糖尿病の骨脆弱性の病態に、終末糖化物質(Advanced glycation end-products: AGEs)が関与することを世界に先駆けて証明した(J Clin Endocrinol Metab 2008)。AGEsは酸化ストレスにより誘導されるが、近年動物実験により、酸化ストレスの防御因子である抗酸化酵素Mn-SODの転写がβ-cateninを必要とし、骨形成シグナルであるWnt/β-catenin経路を障害する可能性が示されたが、臨床では未確認であった。 今年度の検討により、Wntシグナルの抑制因子であるスクレロスチンの増加が、骨密度と独立して骨折リスクと関連することを見いだし、世界に先駆けてWnt/β-catenin経路が2型糖尿病患者の骨質低下の病態形成に寄与していることを明らかにした(J Clin Endocrinol Metab 2013)。 これまで骨質低下機序はAGEs沈着による物理的な材質特性劣化で説明されてきた。しかし本研究は骨形成シグナル抑制因子(スクレロスチン)を抑制することにより、骨形成シグナルを維持し、骨質劣化を抑止しうる可能性を初めて明らかにした。本研究により、骨質低下型の続発性骨粗鬆症に対する「骨質改善薬」に発展可能な極めて重要な成果を得た。 また酸化ストレスマーカーである8-OHdGやホモシステインの増加が骨折リスクとなりうることを見いだし、成果の一部を国内外の学会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨形成シグナルであるWnt/β-catenin経路が、2型糖尿病の骨代謝異常の特徴である骨質低下と関連することを明らかにし、内分泌領域の旗艦誌へ論文掲載に至ることができ、研究成果の発表まで順調に計画が遂行可能であった。 一方酸化ストレスとの検討では、HPLC法による長時間の測定時間を要することや、自動測定装置に搭載できないELISA法の測定であり、測定会社の測定能力の関係上、一部の測定結果のみしか得られないことが予期できなかった。 対策として限定した検体によるパイロット検討に急遽変更を行った。このため一部のデータによる限定的な成果しか得られなかったため、一部成果を学会発表したが、論文公表には至れなかった。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ストレスマーカーの外注測定は充分な納期を用意することにより全結果を得ることが可能であると回答を得ており、最終的な結論を得るための統計学的検討を実施が可能である。 酸化ストレスによる骨代謝異常に関する臨床的検討は先行研究の事例がない。種々の議論・反論が予想されるため、パイロットデータの研究室内での検討会および学会発表で討論に基づき、より正確度の高い対象集団に絞ることを決定した。さらに統計学的手法を導入し、背景因子の種々の差異を調整した結論を導く。質の高い専門領域の研究者の討議を得るために、国内外の最高峰の学会ならびに雑誌で演題発表および論文投稿を行い、本研究結果の限界点(limitation)を明確にし、最終結論を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
酸化ストレスマーカーの測定に長時間を要し、全ての検体測定が実施できていないため精算が行われていないため、次年度使用額が生じている。この結果、文作成に至らなかったため、英文校正費用の支払いが生じている。 検体測定終了の見通しが立っており、測定費用を次年度に支払う見込みである。データを得て論文作成が可能であり、英文校正、印刷費等の成果報告に関する支払いを予定している。
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