発達期の過剰なストレス経験は、ストレス直後のみならず、成長後まで長期にわたって影響を及ぼし、青年期・成人期以降の様々な疾患の発症契機の一因となりうる。近年、発達期のストレス経験の長期的影響について、種々の動物モデルを用いた研究が増加しており、ヒトと同様に成体期への長期的影響についても注目されているが、その生物学的・神経学的基盤の詳細はほとんど分かっていない。発達期のなかでも特に思春期は、ストレス応答の要である視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)が機能発達・成熟する時期である。この時期の過剰なストレス経験はHPA系の発達に影響を及ぼし、ひいては成体期のストレス応答をも変化させる可能性が推測される。そこで本研究ではラットを用いて、思春期ストレス経験が成体期のストレス応答性に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 本年度は、全ての実験群(①思春期-無処置・成体期-無処置群、②思春期-無処置・成体期-ストレス群、 ③思春期前-ストレス・成体期-ストレス群、④思春期-ストレス・成体期-ストレス群、⑤思春期後-ストレス・成体期-ストレス群)の脳サンプルを用いて行った免疫組織化学染色から得た組織標本を用いて、視床下部室傍核におけるコルチコトロピン放出因子等のストレス関連因子や縫線核におけるセロトニンニューロン(トリプトファン水酸化酵素)の発現解析を行った。また、実験群から採取した血液サンプルを用いて、ELISA法によりコルチコステロンの濃度を測定した。
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