研究課題/領域番号 |
25460902
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野崎 剛弘 九州大学, 大学病院, 特任講師 (60301339)
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研究分担者 |
須藤 信行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60304812)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肥満 / 認知行動療法 / 集団療法 / 食行動 / 睡眠 / アクチグラフ / うつ / QOL |
研究実績の概要 |
肥満治療では、減量した体重をいかにして再増加(リバウンド)することなく維持できるかが全世界的に喫緊の課題となっている。我々は肥満患者に対して外来にて集団で認知行動療法を行い、減量および減量後のリバウンド防止に必要な条件とその方法を、以下の3つに分けて、前向き研究にて同定し、検証することを課題とした。1)リバウンド防止のための効果的治療の検証、2)睡眠関連の生理学的指標と減量および体重維持との関連、3)心理社会的変数と減量および体重維持との関連。 女性肥満症患者119名に対し、10か月間計38セッションの集団認知行動療法を外来にて実施した。7か月間を減量期、続く3ヵ月間はリバウンド防止を目的とする体重維持期間とした。減量期終了時に2群に無作為に分け、治療終了後2年時点の体重をもって両群のリバウンドの程度を比較することをメイン・アウトカムとした。また治療前後でアクチグラフ及び各種心理テストを実施し、その変化及び減量に対する影響を検討した。 1)全10か月の治療完遂者は88名であり、平均BMI減少率は14.2%であった。現在、すべての患者が治療終了後1年を経過しており、その後の追跡調査を継続している。2)アクチグラフによる睡眠関連指標で、覚醒回数が減量効果を予測した(Sawamoto&Nozaki:Nutr Diab, 2014)。3)減量後、食行動関連指標では、過食スコア(BITE)、食事制限、脱抑制、空腹感の各スコア(TEFQ)及びむちゃ食いスコア(BES)の有意な低下を認め、ボディイメージ(BSQ)の有意な改善が見られた。QOL関連は、身体機能、社会生活機能(SF-36)が有意に改善した。 肥満症患者に対する集団認知行動療法では、摂食関連指標、ボディイメージ、QOL他、睡眠関連指標の改善がみられ、個人療法に匹敵する減量効果が認められた。外来治療における集団療法は個人療法に比べ費用対効果性に優れ、今後積極的に導入すべきであると 考えられた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、肥満患者に対して行った認知行動療法に基づく無作為化比較試験であり、減量後のリバウンド防止効果を検証することを主目的とする。減量期終了時に、維持期の異なる治療内容で2群に無作為化して分け、その後治療を完遂した88名を6ヶ月毎に追跡調査している。エンドポイントは治療終了2年後であり、平成28年3月ですべての患者の追跡を終える予定である。 なお、今年度は減量効果に及ぼす睡眠関連指標の影響を検討し、ベースラインの覚醒回数が治療による減量率を予測するという新たなエビデンスを得ることができ、その成果がNutrition and Diabetes(2014)に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中核である10ヶ月間の肥満治療は終了したので、今後は無作為化した2群間で2年後のリバウンドの程度を比較することが最終課題となる。治療期間中の脱落率が約4分の1であったので、フォロー中にできるだけ脱落者を出さないようにすることが、結果の精度を高めることになる。したがって、手紙や電話、参加者のネットワークなどを通じて、データの収集を怠らないように努める。 また、減量治療によるバイオマーカーの変化と睡眠関連指標との関連、むちゃ食いなどの食行動異常とバイオマーカーとの関連、およびドロップアウト患者の心理特性についての各論文を現在執筆中であり、今年度内に国際英文誌に掲載されることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支出が予定額より少なく、その他の支出が超過となったが、その差し引き分が次年度に繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰越金額は、旅費として計上して使用する。
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