研究実績の概要 |
【目的】肥満治療では、減量した体重をいかにしてリバウンドすることなく維持できるかが全世界的に喫緊の課題となっている。我々は肥満症患者に対して認知行動療法を行い、減量および減量後のリバウンド防止に必要な条件とその方法を、前向き研究にて同定し、検証することを課題とした。 【方法】女性肥満症患者119名に対し、10か月間計38回の集団認知行動療法を外来にて実施した。7か月間を減量期、続く3か月間はリバウンド防止を目的とする体重維持期間とした。減量期終了時に身体活動強化群と復習群(対照群)の2群に無作為に分けた。治療終了後2年間体重をフォローし、身体活動強化群のリバウンド防止効果の検証をメインアウトカムとした。また治療前後でアクチグラフ及び各種心理テストを実施し、睡眠や心理的要因が減量に与える影響を検討した。 【結果】1)全10か月の治療完遂者は88名であり、平均BMI減少率は14.2%であった。治療終了後2年時点で、身体活動強化群と復習群間でリバウンド防止効果に差はみられなかった。2)アクチグラフによる睡眠関連指標で、べースラインの睡眠時覚醒回数が減量効果を予測した。すなわち、覚醒回数が5回以上の群の減量率が15.4%に対し、5回未満では11.7%と有意差を認め、後者ではインスリン抵抗性が有意に高かった(Nutr Diab 4: e144,2014)。3)治療による睡眠時間の増加が、独立して血清アディポネクチンの増加量と有意な関連を示した(Obesity Facts 9,2016)4)治療期間中のドロップアウトの予測因子は、体形への強いこだわり、几帳面さに欠ける性格、小児期に受けた母親からの低い養護、無職であった。(Obes Sci Prac 2,2016)。 【結論】身体活動強化は治療後のリバウンド防止に有効ではなかった。減量治療に当たっては睡眠の評価が重要であることが示唆された。
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