研究概要 |
九州大学病院心療内科の外来・入院患者約100名に対して,医学的評価とともに,質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、心理的特性・状態の評価を実施した。また、血漿オキシトシン濃度の安定的な測定手技を確立し測定を開始。同時に血漿テストステロンなどの関連ホルモン・自律神経機能の測定を約30名実施し,さらに症例数を増やし解析する。 上記データと当科で過去に収集した一般住民のデータを使用し「慢性疼痛の重症度と幼少時の両親の養育態度の差異について」検討した。 【方法】対象者は性・年齢をマッチさせた地域一般住民で,痛みのない群(以下,一般健常群:n=114),6ヶ月以上続く慢性疼痛をもつ群(一般疼痛群:n=114),九州大学病院心療内科外来の慢性疼痛患者群(外来群:n=57),同入院患者群(入院群:n=57) の4群とし, Parental Bonding Instrument(PBI)にて16歳までの両親の養育態度(ケア・過干渉)を評価、養育パターンの頻度の解析にはロジスティック回帰分析を行い,婚姻状況,教育年数,痛み強度で調整。 【結果】父親に「低ケア/過干渉」の養育パターンを有するオッズ比は、一般健常群を対照とし、一般疼痛群1.44 (95%CI:0.74-2.82), 外来群2.35 (1.10-5.02) , 入院群3.66 (1.77-7.57) , 母親に[低ケア/過干渉]の養育パターンを有するオッズ比は、一般疼痛群1.82 (0.88-3.81), 外来群2.99 (1.33-6.73) , 入院群3.49 (1.56-7.77)。傾向性の検定はp<0.01で有意であった。「低ケア/過干渉」な両親の養育態度は慢性疼痛が重症になるにつれ多くなっていた.以上から,幼少期の両親の養育態度が慢性疼痛の重症化に関連していることが示唆された。
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