研究課題/領域番号 |
25460903
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河田 浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60425311)
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研究分担者 |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自律神経機能 / 交感神経 / 副交感神経 / 心拍変動 / 慢性疼痛 / 疼痛関連指標 / 抑うつ / 被養育体験 |
研究実績の概要 |
九州大学心療内科外来・入院患者約150名に対して、医学的評価、質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、心理的特性・状態の評価、血漿オキシトシン濃度、自律神経機能の測定を実施。上記のデータから心拍変動解析を用いて自律神経機能と疼痛関連指標、精神症状、被養育体験の関連について検討した。 【方法】慢性疼痛の主訴で九州大学心療内科に入院した93名を対象に、心拍変動測定(APGハートレーターSA-3000P(東京医研)を使用し5分間測定)、および以下の質問紙(簡易型McGill痛み質問表:SF-MPQ、疼痛生活障害評価尺度:PDAS、The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:CES-D、状態・特性不安検査: STAI、被養育体験の質問紙Parental Bonding Instrument: PBI)を実施した。心拍変動分析の心拍変動標準偏差(SDNN)、トータルパワー(TP)、低周波領域(LF)、高周波領域(HF)、LF/HF比と、慢性疼痛関連質問紙の各因子との関連について性、年齢、婚姻状況、教育年数を調整し偏相関解析を行った。 【結果】疼痛VASはSDNNの低下と弱い関連が見られた(p=0.07)。SFMPQ-A(痛みの感情成分)はSDNN・TP・LF・HFの低下と有意に関連した(p<0.05)。PDAS総点(生活障害)はLF低下と有意に関連した(p<0.05)。STAI-Ⅱ(特性不安)とCES-D(抑うつ)はLF/HF比の低下と有意に関連した(p<0.05)。PBI(養育因子)の父親のケアの低さはSDNNの低下に有意に関連した(p<0.05)。以上から慢性疼痛患者における自律神経機能の低下は痛みの強さ・痛みの感情成分・生活障害・被養育体験因子に関連し、交感神経活性の低下は抑うつ・特性不安症状に関連が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象者に対して、医学的評価や質問紙による疼痛関連指標、被養育体験、心理的特性・状態の評価は順調であるが、血漿ホルモンの測定については、測定キットのメーカー側の一部改良による変更などにより、新旧キット間での測定値の差異の問題が発生し、対策を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き九州大学心療内科の外来・入院患者にて、医学的評価、質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、心理的特性・状態の評価、血漿オキシトシン、テストステロン濃度などの関連ホルモンの測定、自律神経機能の測定を継続し、データ収集を行っていく。 適宜、各因子の関連について解析を進めていく。 平成27年度は収集したデータの解析、および、治療介入前後でのデータの変化についても検討していく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の当初、血漿オキシトシン濃度測定にい使用していた測定用キットが、メーカ側の一部規格変更に伴い、新旧キットの測定値に差異が生じたため、その対策に一時測定を保留していた。そのため予定していた解析や、研究結果の学会発表や論文執筆なども保留となっていた。保留分の測定、その後の解析、発表活動が平成27年度に繰り越されるため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の保留分、および新規の血漿オキシトシン濃度の測定を継続していく。また、その結果と他の各種データとの間で解析を行い、学会発表や論文化も進めていく。
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