研究課題
九州大学病院心療内科の外来・入院患者約150名に対して、医学的評価とともに、質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、それに関連する現在の家族機能、心理的特性・状態の評価、同時に血清オキシトシン、テストステロンなどの関連ホルモン、自律神経機能の測定を実施した。上記データと当科の期間内・過去のデータを使用し「現在の家族機能と慢性疼痛患者における身体的・心理的機能障害との関連」について検討した。【方法】対象は慢性の疼痛を主訴に当科初診した209名(男/女=55/154名,平均年齢48.1 ±16歳)。痛みによる生活機能障害をPain Disability Assessment Scale、抑うつ症状をCenter for Epidemiologic Studies Depression scale、痛みの破局化をPain Catastrophizing Scale、現在の家族機能をFamily Assessment Device(6つの下位尺度:問題解決、意志疏通、役割、情緒的反応、情緒的関与、行動統制)を用いて評価した。生活機能障害および抑うつ症状を目的変数として、家族機能を説明変数、年齢・痛みの持続期間・痛みの破局化を調整因子として重回帰分析を男女で層別化しそれぞれにつき実施。【結果】男性においては、痛みの破局化で調整前は、「意志疏通」と生活機能障害、「情緒的関与」と抑うつ症状の間で有意な関連がみられた。痛みの破局化で調整後、前者の関連は有意に残り、後者の関連は消失した。女性においては、痛みの破局化で調整前は、「情緒的関与」と生活機能障害および抑うつ症状と関連がみられたが、痛みの破局化で調整するといずれの関連も消失した。【結論】慢性疼痛患者の身体的・心理的機能において、家族機能が関連しており、その関連は男女差がみられ、一部は痛みの破局化が媒介している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
医学的評価、質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、心理的特性・状態の評価についてはおおむね順調にデータが蓄積されている。血清オキシトシンなどの関連ホルモン、自律神経機能の測定のデータ収集がやや遅れいている。現在、オキシトシンをより簡便に測定する手技の改良に着手している。
引き続き九州大学病院心療内科の慢性疼痛を有する外来・入院患者に対して、医学的評価とともに、質問紙による慢性疼痛関連指標、被養育体験、それに関連する現在の家族機能、心理的特性・状態の評価、同時に血清オキシトシンなどの関連ホルモン、自律神経機能の測定を実施していく。適宜、各因子の関連、治療による変化などについて解析を行っていく。
平成25-27年度に実施予定であった血中オキシトシンをはじめとする各種ホルモン測定が、手技上の問題などで実施が遅れたため。
上記の実施が遅れている各種ホルモン検査を次年度に実施するため。
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