研究課題/領域番号 |
25460905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 成志 大分大学, 医学部, 講師 (30433048)
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研究分担者 |
中村 憲一郎 大分大学, 医学部, 助教 (70608372)
麻生 泰弘 大分大学, 医学部, 助教 (80555194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 軽度認知障害 / アルツハイマー病 / アミロイドイメージング / PET / MRI / バイオマーカー / 神経心理検査 |
研究概要 |
これまでに65歳以上85歳未満の軽度認知障害者(MCI)47例(男:女=16/31, 平均年齢76.7±4.7歳)及び健常高齢者(control)25例(男:女=14/11, 平均年齢74.8±4.9歳)が本研究に参加した。全例にMMSE、ADAS-cog、WMS-R等の神経心理学的検査および血液検査を施行した。さらに軽度認知障害者には髄液検査を施行した。画像検査として3.0T MRI、PIB-PET、FDG-PETを施行した。保存した血漿と髄液を用いてMulti Plex assay systemにより炎症性サイトカイン(38項目)、糖尿病・脂質異常症(11項目)、tau、アミロイドβ42、p-tauを測定した。これまでに以下の項目を明らかにした。 1.MMSE、ADAS-cog、WMS-Rともcontrolに比べMCIで有意に低下していたが、controlおよびMCIの各々においてアミロイド陽性群と陰性群に有意差はなかった。神経心理検査では、アミロイド陽性を予測することは困難である。 2.PIB-PETではMCIの30例(63.8%)、健常高齢者の6例(24%)に脳内アミロイド沈着を認め、FDG- PET ではMCIのアミロイド陽性群の23%(6例)に後部帯状回、側頭頭頂葉の糖代謝低下を認めた。この結果からMCIの段階から半数以上に脳内アミロイド沈着が進行しており、すでに脳機能が低下している者もある。 3.MCIのアミロイド陽性群ではアミロイドβ42の低下およびtauとp-tauの増加を認める。さらに、血漿中のIL-1ra、IL-2、IL-12p70、IL-17、FGF basic、PDGF-bb、VEGF、adiponectin、髄液中のLIF、SCGF-βがアミロイド陽性を予測するバイオマーカーの候補となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
私は、科学研究費獲得以前から学内競争的資金(学長裁量経費)を得てMCIと健常者を対象に3.0T-MRI、11C-Pittsburgh compound B (PIB)-PETを実施していた。また、MCI症例を検出するためにモデル地域で認知症検診を実施している。市行政や医師会と連携することで地域在宅高齢者および通院中の患者に対してスクリーニング検査を行うシステムを構築した。これにより多数のMCI症例が本研究に参加した。さらに、臨床試験専用ユニットが稼働し、治験コーディネータによる臨床試験の支援も充実していることも研究の推進に重要であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画を示す。 1.3.0T MRI、PIB-PET、FDG-PETの画像解析を進める。3.0T MRI では、FAZEKAS分類による大脳白質病変の評価、拡散テンソル画像による関心領域のFractional anisotropy (FA)値測定を行う。PIB-PETでは、前頭葉、側頭頭頂葉外側部、楔前部の平均値を小脳皮質の測定値を基準とした対小脳比(mean cortical SUVR)を算出する。FDG-PETでは、SPM解析を用いて糖代謝低下部位の客観的評価を行う。 2.神経心理検査の経年的評価を行い、認知症移行率を算出する。 3.無症候性白質病変と認知機能、PIB集積量、血液・脳脊髄液マーカーの関連を解析し、無症候性白質病変の発症機構やアルツハイマー病理に対する影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
Multi Plex assay systemによる血漿および髄液バイオマーカーの測定には、1回につき400,000万円の費用を要する。このため、次年度の予算と合わせてkitを購入することにした。 再現性を確認するため、血漿と髄液を用いてMulti Plex assay systemにより炎症性サイトカイン(38項目)、糖尿病・脂質異常症(11項目)、tau、アミロイドβ42、p-tauの測定を行う。
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