研究課題/領域番号 |
25460905
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 成志 大分大学, 医学部, 講師 (30433048)
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研究分担者 |
中村 憲一郎 大分大学, 医学部, 医員 (70608372)
麻生 泰弘 大分大学, 医学部, 助教 (80555194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知症 / 軽度認知障害 / アルツハイマー病 / アミロイドイメージング / バイオマーカー / 大脳白質病変 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)における無症候性大脳白質病変(WMLs)の臨床的意義を解明するため、WMLsがADの認知機能と脳血流に及ぼす影響を検討した。probable AD 98例(男:女=40: 58, 平均年齢78.1歳)を対象に頭部MRIと脳血流SPECTを施行した。WMLs(+)群とWMLs(-)群に分けて血管危険因子、baselineのMMSE、脳血流量、長期臨床経過を比較した。さらに、治療開始後24カ月以上経過観察し、経時的な脳血流SPECT検査を施行えた38例(男15例/女23例,平均年齢76.4歳)を対象にMMSEと脳血流量の変化をWilcoxon順位和検定により解析した。これにより、①ADでは、58%(57/98)にWMLsを認める、②WMLs(+)群では、高血圧を有する頻度が有意に高い(p=0.0287) 、③WMLs(+)群はWMLs(-)群と比較して前部帯状回と島皮質などの辺縁系の血流が低下する、④WMLs(+)群はWMLs(-)群と比較して認知機能障害の進行が速い。(MMSE変化値:WMLs(-)群 -2.1±5.6<p=0.173>, WMLs(+)群 -3.8±5.2< p=0.003>)、⑤WMLs(+)群は、2年後の脳全体血流量が有意に低下し(p=0.008)、特に前頭葉内側部、島皮質、側頭葉内側面の脳血流が低下することを明らかにした。ADの治療では、ADの病態に対する根本的治療に加え、血管危険因子および血管保護を目的とした治療も重要であることを証明した。さらに、我々は、65歳以上85歳未満の軽度認知障害者(MCI)47例、健常高齢者25例を対象として神経心理学的検査、血液検査、脳脊髄液検、3.0T MRI、PIB-PET、FDG-PETの解析を継続している。これにより、①MCIの30例(63.8%)、健常高齢者の6例(24%)に脳内アミロイド沈着を認め、MCIのアミロイド陽性群では後部帯状回、側頭頭頂葉の糖代謝が低下する、②拡散テンソル画像を用いた大脳白質の解析では、特にアミロイド沈着を伴うMCIで白質変性が強い傾向があり、髄液中の炎症性サイトカインが上昇していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科学研究費獲得以前から学内競争的資金(学長裁量経費)を得てMCIと健常者を対象に3.0T-MRI、11C-Pittsburgh compound B (PIB)-PETを実施していた。大規模な症例の蓄積、安全かつ高精度での3.0T-MRI、アミロイドPET、FDG-PETの施行に必要な大学全体としての連携体制が構築されている。さらに、臨床研究全体のマネジメント及びデータベースの作成・管理には包括的実施機能を有する総合臨床研究センターが充実していることも研究の推進に重要であった。
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今後の研究の推進方策 |
①MCIおよび健常高齢者の症例数を拡大し、3.0T MRI、PIB-PET、FDG-PETの画像解析を進める。 ②拡散テンソル画像による関心領域のFractional anisotropy (FA)値測と神経心理学的検査、脳内アミロイド蓄積量、脳代謝量および血液・脳脊髄液マーカーの関連を明らかにする。 ③神経心理検査の経年的評価から大脳白質病変の有無による認知症移行率を解析する。 先端脳画像検査および血液・脳脊髄液を用いた病態関連分子の網羅的解析により、無症候白質病変とADの臨床症状との関連およびその分子メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究結果から対象症例を拡大する必要があり、必要症例数に達した後に血液・髄液バイオマーカーの測定を行うため、次年度使用学が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
血液・髄液バイオマーカーの測定に必要な物品購入および研究成果発表に使用する予定である。
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