本研究では、大建中湯(DKT)のどの生薬がPOIモデルの抗炎症作用に対して最も重要なのかを検討した。そこで、DKTの構成生薬一味ずつを投与した場合に、POIモデルにおけるマクロファージ浸潤抑制作用と好中球浸潤抑制作用がどう変化するのかを検討した。その結果、乾姜にマクロファージ浸潤抑制作用があることが明らかとなった。 乾姜がPOIにおけるマクファージ浸潤を介した抗炎症作用の主たる成分と分かったので、DKT同様に実験して確認した。その結果からPOIモデルにおける乾姜のマクロファージ浸潤抑制効果にα7nAChRが関与することが示された。さらに、5-HT4R KOマウスを用いて乾姜のマクロファージ浸潤抑制効果がどう変化するのかを検討したところ、KOマウスでは乾姜のマクロファージ浸潤抑制効果が消失した。このことから、本研究で乾姜が5-HT4Rを活性化することが始めて明らかとなり、また、乾姜のマクロファージ浸潤抑制作用はα7nAChRを直接刺激するのではなく、5-HT4Rの活性化により筋層間神経叢のコリン作動性神経からのAch分泌を促進し、このAchが炎症により活性化したマクロファージ細胞膜上のα7nAChRを活性化して抗炎症作用を発揮する可能性が示唆された。 結論として、乾姜がPOIにおけるDKTのマクロファージ浸潤抑制を介した抗炎症作用の活性生薬として同定された。乾姜の抗炎症作用は、5-HT4Rを介したアセチルコリ分泌促進を介したα7nAChRの活性化によることが示された。
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