研究課題
高齢者のがん医療においては、医学的病態のみならず、精神的/社会的背景等により、治療成績やQOLに大きな影響が出ることが指摘されている。適切な治療を提供していくために、高齢者機能評価を盛り込んだ臨床試験を企画した。倫理委員会で承認された研究計画書に基づき、70歳以上で塩酸ゲムシタビンの治療を予定する切除不能膵臓がん患者に対して、治療前および治療開始後に2カ月ごとに機能評価を行う臨床試験を進めている。平成25年6月から登録を開始し、今年度も登録を継続し平成27年3月末の時点で計30例の登録が行われた。併せてQOL(EQ-5D)のデータも集積中である。QOLに配慮した医療を提供するにあたって、高齢者においては特に意思決定支援が重要であることから、「治療開始時の意思決定支援」と「がん患者指導管理」をキーワードに情報共有を開始した。具体的には、意思決定支援の現状(腫瘍医、がん看護専門看護師、相談支援センター)、意思決定にまつわるバイアスの問題、高齢者の終末期の意思決定等である。高齢者のがんを対象としたエビデンスは乏しく、臨床研究を発展・推進させるために、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では高齢者研究小委員会を設置し本研究代表者が委員長を務めて検討を進めている。26年度の検討にて、スクリーニングツールであるG8を含む機能評価を電子端末にて収集するシステムを構築した。今後、大規模なデータ収集は、多施設臨床研究等で収集する予定である。一方、実地臨床において、効率的で実際的な機能評価実施手順を考慮中である。専門施設としての杏林大学病院がんセンターにおいては、多職種から構成される高齢者機能評価チームを構築し、一般施設で実施可能な仕組みの確立に向けて情報収集中である。
2: おおむね順調に進展している
高齢者膵がんを対象とした前向き試験の研究計画書を作成し、倫理委員会の承認が得られ、計30名の登録患者が得られ、臨床試験は順調に進捗している。一方、大腸癌や肺がんなど、各癌腫ごとのデータは、日本臨床腫瘍研究グループにおいても研究を進めており、各研究者と情報を共有する体制が整ったため、本研究で扱う部分との重複を避けるべく、適切に研究計画を見直した。
平成26年3月に設置された日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の高齢者研究小委員会において様々な検討を行っている。全国の多分野に渡る研究者間で情報共有を進めており、効率化を目指している。がん医療において、機能評価をどのように治療介入に結び付けられるかは世界的な課題とされていて、現在着目しているのは「意思決定支援」の視点である。日々のがん医療において、治療法選択は患者、医療スタッフが常に悩み、相談をしながら進める事項である。この視点のもと、QOLに配慮した、実際的な診療アルゴリズムを提案する予定である。
平成26年度は測定患者数が増えたため、人件費を計上した。さらに、がんと虚弱についての基礎的検討も併せて情報収集を始めたため、必要な消耗品等として使用した。
平成27年度はさらに測定患者が増え、高齢者機能評価を担当するチームとしてシステムが機能するように、人件費、消耗品等に使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
杏林医会誌
巻: 46(1) ページ: 27-28
巻: 46(1) ページ: 83-86
Cancer Chemother Pharmacol
巻: 75 ページ: 457-64
10.1007/s00280-014-2665-8
癌と化学療法
巻: 42 ページ: 16-20
巻: 73(4) ページ: 673-83
10.1007/s00280-014-2374-3