研究課題
本研究は、骨格筋間葉系幹細胞(MSC: mesenchymal stem cell)の末梢動脈疾患治療への応用を目指し、同幹細胞の細胞機能促進因子と抑制因子の検討を行ってきたラット骨格筋MSCにおいて、骨髄由来MSCとの比較で、有意にVEGF産生能が高いことが示された。また、in vitro血管新生アッセイでも、骨格筋MSC由来液性因子は有意に内皮細胞増生を促進した。骨格筋MSCの活性化因子の探索では、エリスロポエチンが候補として挙がり、エリスロポエチン(Epo)で刺激したところ、STAT3やAktのリン酸化が亢進し、細胞増殖ならびにVEGF遺伝子の発現が亢進した。次に、ヒト骨格筋組織よりMSC単離が可能となり、Epo刺激により細胞数が10~20%程度増加し、ヒトMSCにおいてもmitogenであることが明らかとなった。しかしながら、網羅的遺伝子発現解析においてラットと異なり血管新生因子の有意な上昇は認めなかった。次にMSC機能抑制因子としてFGF-23に着目し、検討を行った。FGF-23刺激により、MSC細胞数は有意に減少し、細胞老化が誘導されることがわかった。これはangiotensinIIより作用が強く、酸化ストレス/p53/p21シグナルの増強が機序であった。血中FGF-23が上昇している透析患者の骨格筋組織の病理標本において、異所性脂肪浸潤部位に老化MSCが同定されたため、培養系で骨格筋MSCの脂肪分化の検討を行ったが、FGF-23が有意に脂肪分化を促進する結果は得られなかった。本研究において、腎臓病において重要な役割を果たすサイトカインであるEpoとFGF-23が骨格筋MSCの機能を制御することが明らかとなった。腎臓病では末梢動脈疾患の合併が多く、その原因に骨格筋MSCが関わっていることが示唆され、治療標的としての可能性が示された。
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