原子力発電所事故広域避難者に対して、大規模アンケート調査、半構造化インタビュー調査、人類学的フィールド調査を行なった。その結果、避難者には極めて高い心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性が見いだされ、その精神的被害には、原発事故によってもたらされた経済的問題、住宅問題、賠償格差の問題、家族やコミュニティ分断の問題、などの社会経済的問題が関与していることを統計学的に明らかにした。避難者のメンタルヘルスの問題は決して個人的なものではなく、社会のいわば「構造的暴力」が避難者の生活や人生を傷つけていると考えられた。避難者の自殺予防には、様々な社会経済的問題の解決といった「社会的ケア」が必要である。
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