研究実績の概要 |
最近我々は開心術中患者の血中に高い増殖能と心筋分化能を持つ細胞(cMAB)が動員される事を報告した。その後、我々はcMABが心臓カテーテル検査中の患者血中にも動員される事を見いだした。今回の研究の目的は①cMABのoriginと生体内での分布を検討すること(ヒト、マウス)②cMABの効率の良い心筋細胞への分化誘導法を検討する事である。またこの2つを効率よくヒトで検討するためにはcMAB獲得するために必要なヘパリンの投与量(これまでの検討では300単位/kgが必要)を少しでも減量しうるプロトコールの調整が必要である。 25年度は上記の①、②を効率よく行うためどうすれば心臓カテーテル検査時により少量のヘパリンでより多くのcMABを獲得できるかという問題に、より重点的に取り組んだ。これまでにHGFがcMABの末梢循環への動員に重要であることがわかっていたが、cMAB動員の効率を改善できると考えた理由は開心術中と心臓カテーテル検査中とで血漿中のHGF濃度とcMABの動員効率を比較すると心臓カテーテル検査の効率の悪さが明らかであるということがあげられる。プロトコールの微調整を行い最終的に100単位/kg(心臓カテーテル検査を施行する際のほぼ通常量)まで減量に成功した。 26年度はそのプロトコールを用いることで安定してcMABを獲得できる事を確認した。また②の分化誘導実験を主に行った。心筋細胞との共培養系を用いる事無く、成人幹細胞に心筋分化誘導を行う事はこれまでの報告が示すように容易ではない。cMABは間葉系細胞の特徴を持ち、かつOct4, cMyc, KLF4やNkx2.5, KDR,を発現しておりES細胞に心筋分化誘導を行った際に心筋細胞に分化する途上の細胞のようなマーカー発現パターンを有している。成人幹細胞、前駆細胞の心筋分化誘導は困難な課題ではあるが、少しずつ進展している。
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