最近我々は開心術中の患者血中に高い増殖能と心筋分化能を持つ細胞(cMAB)が動員される事を報告した。その後の検討を経て、我々は新たにcMABが心臓カテーテル検査中にヘパリンによって末梢循環中へ動員される事を見いだした(論文作成中)。今回の研究の目的は①cMABのoriginと生体内での分布を検討すること(ヒト、マウス)②cMABの効率の良い心筋分化誘導法を検討する事である。 25年度は心臓カテーテルのプロトコールを調整することでMABを末梢循環中へ動員するために必要なヘパリンの量を300単位/kg(開心術の際に投与される量)から100単位/kg(心臓カテーテルを施行する際のほぼ通常量)まで減量する事に成功した(論文作成中)。 26~27年度では①cMABのoriginと生体内での分布を検討することに関しては、心臓カテーテル中に複数箇所での同時血液サンプリンを行い、cMABが心臓由来である可能性が濃厚となった。より確証を得るため、性不一致心移植を受けた患者での血液サンプリングを行うべくドイツとの共同研究を始動したが、担当医師の退職で中止。そこで国内施設との共同研究を画策したが倫理委員会の許可が下りず、断念。またMABが発現している細胞表面マーカーのリポーターマウスを海外施設が所有している事が判明したため、共同研究を画策したが、最後のマウス発送の段階で当施設の動物センターの(突然の)規定変更により海外施設からのマウスの搬入は胚化が必須となり、共同研究は中止。よって、心臓カテーテル中の複数箇所での同時血液サンプリングの結果のみで論文を作成中である。 ②cMABの効率の良い心筋分化誘導法の検討に関しては様々なマトリックス、薬剤を試み、最終的にマクロ上はiPSCsに心筋分化誘導を行った状態に酷似した状態まで誘導する事が出来たが、拍動するまでには至らなかった。
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