研究課題
消化器癌は造血器腫瘍や生殖器癌に比較して化学療法の奏効率は低く、多剤併用による強力な化学療法を行っても、進行癌においては未だに予後不良である。癌化学療法の問題点の一つに、治療により薬剤耐性細胞が出現し、再増殖を来すことがあげられる。そのため抗癌剤への感受性や耐性に関する分子機構の解明は非常に重要である。近年、上皮細胞が間葉系細胞に形態変化する現象である上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)が、癌細胞の浸潤能亢進、抗癌剤耐性獲得などに関連していることが報告されているが、その機序は不明な点が多い。遺伝情報の発現は、DNAから蛋白質までの様々な段階で複雑に制御されている。RNA結合蛋白質(RBP)は、mRNAのスプライシング、核外輸送、細胞質内局在、安定性及び翻訳効率の調節などの転写後遺伝子発現調節において重要な働きをしている。申請者らはRNA結合蛋白RBM5が、癌抑制遺伝子p53の転写活性を亢進させることを報告した。さらに各種の癌細胞、癌組織においてRBM5の発現が低下していることを見出した。またRBM5は癌細胞に対して、5-FUなどの各種抗癌剤の感受性を高めることも解明した。RBM5の発現量により変動するRBM5下流遺伝子群の解析およびRBM5結合遺伝子を網羅的に解析し、癌細胞内での機能解析を行った。これまでに、抗癌剤投与中の癌細胞において、RBM5が発現により変動するEMT制御遺伝子を網羅的に解析を行った。その中でEMTとの関連の報告の無い新規のEMT制御遺伝子あるいは抗癌剤感耐性制御遺伝子有望なものを詳細に検討し、抗癌剤耐性克服への応用を目指し研究を発展させている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Cancer Biology & Therapy
巻: 16 ページ: 933-940
10.1080/15384047.2015.1040959