研究課題
基盤研究(C)
癌化学療法や悪液質にともなう食欲不振の病態解明は遅れており、有効な治療法も確立していない。これまで申請者らは、六君子湯およびその成分が、複数の機序によりグレリンシグナルを増強し、食欲不振を改善することを報告してきた。しかしながら、グレリンの細胞内エフェクターであるAMP依存性蛋白質リン酸化酵素(AMPK)およびNAD依存性脱アセチル化酵素1(SIRT1)に対する六君子湯の直接作用の有無は検討されていない。本研究はこの点を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、細胞内のSIRT1およびAMPK活性に及ぼす六君子湯の影響を解析した。グレリン受容体(GHSR1a)を発現している培養細胞(HUVEC、安的的にGHSR1aを発現させたHEK293細胞)に六君子湯溶液を添加したところ、SIRT1蛋白量の増加およびSIRT1活性の上昇が認められた。これらの効果はGHSR1aアンタゴニストである、SP-analogあるいはD-Lys :[D-Lys-3]-GHRP-6によって消失した。また、六君子湯はSIRT1の基質であるp53、PGC-1α、FOXO3aのアセチル化状態を減少させることが示された。さらに、六君子湯は、AMPKのリン酸化を促進し、AMPK活性を高めている事も明らかとなった。以上より、少なくとも細胞レベルにおいては、六君子湯がSIRT1およびAMPK活性を増強することが確認された。
3: やや遅れている
アセチル化リジン抗体を用いた免疫沈降ーウェスタンブロットの結果が安定して得られないため。
平成26年度は、雄性C57BL6マウスに六君子湯を経口投与した後、視床下部および末梢臓器(肝臓等)のSIRT1およびAMPKの定量あるいは活性測定を行う。この実験により、細胞レベル明らかとなった六君子湯の効果が、個体レベルにおいても観察されるかどうかを明らかにする予定である。
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