研究課題
【背景】食道腺癌は男性優位に発現する予後不良な悪性疾患であり、その前駆状態であるバレット食道、逆流性食道炎の発現も男性で多いことが知られている。その要因の一つに、女性ホルモンであるエストロゲンがこれら一連の食道疾患に対して抑制的に作用していることが考えられている。【目的】ウサギ食道粘膜のバリア機能とエストロゲンとの関係をex vivoのUssing chamberを用いたモデルによって検討する。【方法】雄性ウサギの食道を摘出し、電気生理学的検討および透過性の検討を行った。Ussing chamberによる検討14日前に、ウサギ皮下組織に17β-estradiolもしくはplaceboを投与した。Ussing chamberに接続した循環リザーバーの管腔側には塩酸(pH 2.0)、亜硝酸塩(5.0 mM, pH 2.0)、Krebs buffer(pH 7.4)のいずれかを還流し、また基底側には全ての条件でkrebs buffer(pH 7.4)を還流した。また、細胞間隙距離の測定、細胞間接着構造であるtight junction蛋白の発現を検討した。【結果】塩酸および亜硝酸塩投与に伴う経時的な粘膜抵抗値の低下およびフルオレセイン透過量の増加は、17β-estradiol群でその変化が有意に抑制された。また、17β-estradiol群とplacebo群の細胞間隙距離の比較では、17β-estradiol群において酸暴露後の細胞間隙距離が狭く、細胞同士が密に接着する形態が示された。tight junction蛋白であるoccludinは17β-estradiol投与により蛋白の増加が認められた。【結論】エストロゲンはtight junction蛋白であるoccludinの発現を調整し、食道粘膜バリア機能を増強させている可能性が示唆された。
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Dig Dis Sci
巻: 61 ページ: 1028-38
10.1007/s10620-015-3980-6