研究課題
本応募者はH. pylori感染によって生じる胃の前癌病変である胃粘膜萎縮・腸上皮化生の発生・進展において、自然免疫応答分子であるNOD1が果たす役割の解明を試みている。前年までの研究により、NOD1がH. pylori感染によるNF-κBの活性化を抑制することにより、腸上皮化生関連遺伝子Cdx2の誘導発現を抑制することが見出された。また、反対に、NOD1が胃の発生・分化に関与する遺伝子Sox2やプロトンポンプをエンコードする遺伝子Atp4aの発現維持に重要な役割を果たしていることが見出された。最終年度である本年度は前年までに得られた、1年間H. pyloriを感染させたマウスを用いたin vivoの実験結果について、その再現性を確認した。今回も、H. pyloriが1年間感染したNOD1ノックアウト(KO)マウスの胃粘膜は野生型(WT)マウスのそれよりも萎縮していることがHE染色標本、Atp4aの定量RT-PCRにより再確認された。このモデルにおいては、腸上皮化生も以前と同様、NOD1KOマウスにおいてより顕著にみられることが、HE染色標本、Alcian blue染色標本およびそれらを用いて行った腸上皮化生腺管の定量でも確認された。さらには、同標本を用いたCdx2の免疫染色、Cdx2、Muc2およびTff3の定量RT-PCRにおいても、NOD1KOマウス胃粘膜では、WTに比して腸上皮化生に関連する遺伝子が高発現していることが再確認された。これらの研究結果を論文としてまとめ、Cancer Research誌に投稿し、掲載された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Cancer Research
巻: 76 ページ: 1135-1145
10.1158/0008-5472.CAN-15-2272