研究課題
食道扁平上皮癌に対するEGFRシグナル伝達阻害が「治療抵抗性癌細胞」を「治療感受性細胞」へと分化誘導することにより抗がん剤に対する感受性を増強するか、チロシンキナーゼ阻害剤:エルロチニブ、及びEGFR抗体:セツキシマブを用いて検討した。EGFR阻害により、その下流シグナル(Akt, ERK, MAPK, Statシグナル)が有効に抑制されることを確認した。ヒト食道扁平上皮癌細胞TE-1, TE-11細胞にエルロチニブ、セツキシマブを72時間培養後、細胞分化マーカーであるInvolucrin発現をmRNA,蛋白レベルで検討した。両細胞株ともに、濃度依存的、時間依存的にInvolucrinの発現が亢進し、EGFRシグナル阻害による食道扁平上皮癌の細胞分化誘導作用が示された。細胞分化誘導に伴い、細胞増殖は濃度依存的、時間依存的に増殖抑制された。細胞分化誘導機序を解明するため、分化増殖の重要な制御因子であるNotchシグナルに注目し、EGFR阻害剤にNotchシグナル阻害剤を添加し細胞分化誘導作用を検討した。Notchシグナル阻害剤(gammma-secretase inhibitor:GSI)とEGFR阻害剤を同時投与すると、GSI濃度依存的にEGFR阻害剤の分化誘導作用が抑制された。また、EGFR阻害によりNotchレポーター活性が上昇することを示した。このことより、EGFR阻害による分化誘導作用はNotchシグナル伝達シグナル系を介した機序によるものであることが推察された。さらに、5-FU耐性食道癌細胞TE-11R細胞の薬剤耐性(5-FU耐性)はEGFR阻害剤の添加により軽減されることをWST1アッセイで示した。
2: おおむね順調に進展している
食道癌細胞におけるEGFR阻害作用に伴う分化誘導作用、増殖抑制効果を、異なる機序のEGFR阻害剤で示しており、EGFR阻害が細胞分化を誘導することに関する普遍性を示すことができている。また、Notchシグナル阻害剤を用いた実験によりEGFR阻害が細胞分化を誘導する機序についても明らかにすることができている。この観点から本研究は概ね順調に遂行できていると考えられる。
In vitroの実験系で、EGFR阻害による細胞分化誘導が5-FUによる細胞傷害を増強する機序についてさらに検討する。具体的には、細胞内アポトーシスの程度や細胞内活性酸素量、核内Nrf2発現量を検討する予定である。また、In vitro実験で明らかにした事象がin vivoの実験系で再現できるか検討する。5-FU耐性食道癌細胞TE-11Rによるxenograft腫瘍に対しEGFR阻害剤、Notchシグナル阻害剤を投与し、その5-FU感受性に及ぼす抗腫瘍効果を検討する。
必要な試薬が充足したため
次年度の研究経費として使用する予定である
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Oncogene
巻: 34巻18号 ページ: 2347-2359
doi: 10.1038/onc.2014.169