研究課題
本研究では食道癌細胞にEGFRシグナル伝達阻害剤を投与し抗腫瘍効果を検討した。まずin vitroの実験として食道癌細胞株TE11R細胞にチロシンキナーゼ阻害薬エルロチニブあるいは抗体薬セツキシマブを投与し、TE11R細胞中のEGFR阻害効果を確認した。TE11R細胞のEGFR阻害により分化マーカーであるInvolucrin及びCK13の発現が上昇し、これに伴い細胞増殖が抑制された。次にin vivo実験としてTE11R細胞でxenograftモデルを作成後、セツキシマブを投与すると有効な腫瘍増殖抑制効果、分化誘導効果が確認できた。一方、別の食道扁平上皮癌細胞であるTE8細胞に同様のin vitro, in vivo実験を行ったが、この細胞株ではEGFR阻害による分化誘導作用、増殖抑制作用、抗腫瘍効果は認められなかった。TE11R細胞は上皮系癌細胞、TE8細胞は間葉系癌細胞で、この形質の差異がEGFR阻害の効果に影響を及ぼす可能性を考え、次に別の食道癌細胞株TE1(上皮系癌細胞)及びHCE4(間葉系癌細胞)にEGFR阻害を行うと、TE1では分化誘導作用、増殖抑制作用が見られたがHCE4ではその作用が見られなかった。さらに別の食道細胞株T-Epi(上皮系細胞)とT-Mes(間葉系細胞)にEGFR阻害を行った場合も、T-Epiでは分化誘導作用、増殖抑制作用が見られたが、T-Mesではそれらの作用が見られなかった。このように、食道癌細胞におけるEGFR阻害効果は、上皮系癌細胞では有効に働くが、間葉系癌細胞には有効性が乏しい可能性が示唆された。また、EGFR阻害剤投与で分化誘導を行ったTE11R細胞、T-Epi細胞は、無治療の同細胞と比較し有意に抗がん剤5FUの感受性が増強する一方、TE8細胞、T-Mes細胞に同様の治療を行ってもその感受性に影響を及ぼさなかった。以上より食道癌に対するEGFR阻害は上皮系癌細胞には有効性があるが間葉系癌細胞には効果が乏しいことが示された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (3件)
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