研究課題/領域番号 |
25460928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
木下 芳一 島根大学, 医学部, 教授 (30243306)
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研究分担者 |
大嶋 直樹 島根大学, 医学部, 助教 (10403461)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 好酸球性食道炎 / 逆流性食道炎 / マウス / サイトカイン |
研究概要 |
本研究ではマウスに逆流性食道炎と好酸球性食道炎のモデルを組み合わせて作成することで好酸球性食道炎の発生に対する胃酸の役割、酸分泌抑制薬の役割を検討することを目的としている。本年度は野生型BALB/cマウスに好酸球性食道炎と逆流性食道炎の組み合わせたモデルを作成し組織学的な検討とTh2系サイトカインを中心とした免疫学的な検討を行った。好酸球性食道炎のモデルとしては、卵白アルブミンおよびピーナッツ抽出液を刺激抗原として選択し、まずは野生型BALB/cマウスへの腹腔内投与によって感作を行った。続いて再度腹腔内へ投与し、さらに1週間にわたって外来抗原を鼻腔内に連続投与することによって好酸球性食道炎を完成させた。モデル作成後に食道、肺、脾臓をはじめとして全身の臓器を摘出しHE染色によって病理組織学的な検討を行うとともに、RNAを抽出してReal-Time PCRを行いTh2系のサイトカインの測定を行った。HE染色では肺に著明な好酸球の浸潤を伴う炎症が確認された。食道にも好酸球を中心とした白血球の浸潤が粘膜内とともに胃粘膜下層にも認められたがその程度は肺と比べると軽微であった。一方、mRNAレベルでの検討では肺と共に食道粘膜においてもTh2系サイトカインであるIL-5やIL-13の著明な上昇が確認された。一方 逆流性食道炎のモデルを作成しただけでは食道粘膜内に著明な好酸球の浸潤は認められなかった。またTh2系サイトカインの著明な発現増加も観察されなかった。好酸球性食道炎と逆流性食道炎を組み合わせると食道粘膜への浸潤好酸球数が増加する傾向は認めたが両モデルを同一の個体に作成した場合のマウスの生存率が低く両モデルの同時効果を十分に観察することができていない。そのため今後両モデル同時作成の手技、方法を改善しながら生存率を高める工夫を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではマウスを実験動物として用いて好酸球性食道炎の発症に及ぼす胃酸の影響を明らかにするとともにプロトンポンプ阻害薬の好酸球性食道炎に対する抑制効果の本質を明確にすることを目的としている。本年度はこの研究に用いるマウスモデルを確立し胃酸の食道への影響を明確にすることを目的としている。現在の研究の進行状況は好酸球性食道炎のモデルは完成し、またマウスを実験動物とした逆流性食道炎のモデルも完成している。さらにこれらの両モデルを同一個体に作成することも可能となっているが両モデルを同一個体に作製した場合のマウスの生存率がまだ低くモデル作成手法の改善が必要であると考えている。来年度は予定通り好酸球性食道炎モデルマウスを用いて胃酸やプロトンポンプ阻害薬の直接的な食道粘膜の構成細胞に対する影響の検討を開始することができる状態にはあるため研究の予定通りの進行に問題はないと考えている。好酸球性食道炎、逆流性食道炎同時作成モデルの作成方法の改善は個別モデルの検討と合わせて行って行く予定である。そこで本研究の現在の進行状況はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の研究計画通り食道粘膜の構成細胞の機能に胃酸、プロトンポンプ阻害薬がどのような影響を及ぼしているかを主にin vitro の研究を行って明らかとしていく。26年度は対象細胞としては扁平上皮細胞のモデルとしてHet-1A、好酸球のモデルとしてひと末梢血よりnegative selection で得られた好酸球、マスト細胞のモデルとしてNCL-2、RBL-2H3細胞を主に用いる。これらの細胞機能に及ぼす低pHの影響とプロトンポンプ阻害薬の直接的な影響を明らかとしている。さらにin vitro の研究と並行して本年度に引き続いて好酸球性食道炎と逆流性食道炎の両モデルを同一個体のマウスに作成したモデルの安定した作成を目指したin vivo の研究を引き続き行っていく。したがって本研究全体の進行に当初計画と比較して大きな変更は必要なく計画通りおおむね順調に研究は進行できると考えている。
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