In silico p53結合配列解析とクロマチン免疫沈降産物の次世代シーケンサー解析(ChIP-seq)により絞り込まれたゲノム上のp53結合領域近傍に存在する約150のlincRNA(大型遺伝子介在非コードRNA)の内,22のlincRNAがp53ファミリーにより発現誘導され,これらのlincRNAのp53結合部位配列を用いたレポーターアッセイを行ったところp53活性化により転写活性の上昇が認められた.これらの結果から,複数のlincRNAがp53ファミリーの標的となっていることが明らかとなった. これらのlincRNAの中で,3つのp53ファミリーすべてで強く発現誘導が認められる3つのlincRNAについて肝癌細胞Hep3Bおよび大腸癌細胞DLD1においてsiRNAを用いたノックダウンを行い,アデノウイルスによりp53導入時のアポトーシス誘導能をフローサイトメトリー,Capspase-3活性の定量およびウエスタンブロットによるPARP-1の断片化を用いて測定した.その結果,2つのlincRNAではそのノックダウンによりp53によるアポトーシス誘導が減弱した一方,もう1つのlincRNAではアポトーシスの増強が認められた.更にp53正常型である大腸癌細胞RKOおよび骨肉腫細胞U2OSにおいてnutlin-3a処理により内因性p53を活性化した系においても,同様の結果が得られた. これらのlincRNAがどのように機能してp53誘導アポトーシスに影響を与えているのかを調べるため,lincRNAをノックダウンしnutlin-3a処理したHep3B細胞において,マイクロアレイを用いて網羅的な発現解析を行ったところ,nutlin-3aによるp53活性化で発現がlincRNA依存的に誘導される遺伝子クラスターが見出された.
|