研究実績の概要 |
食道上皮における、新規酸感受性の機械受容チャネルの発現と局在を明らかにすることを目的として、酸感受性の機械受容チャネルについて、多数の候補について網羅的解析を進めた。この中でまず新規胆汁酸センサー候補としてAcid sensitive ion channel 5 (ASIC5)についてRT-PCR、免疫組織化学染色、ウエスタンブロット法により精査した。RT-PCR法によれば、マウス食道には2つのスプライシングバリアントが存在し、さらにその遺伝子断片は食道の中部や下部で発現が高いことがわかった。しかしながら市販抗体が機能せず、独自で作製した抗体を使用しても陽性反応が認められなかったことから、現段階でASIC5そのものは食道や胃などの上部消化管では機能していないと結論づけた。その他の候補としてGタンパク共役型のTGR5がバレット食道で発現していると報告から、我々はその発現の可能性についてHET-1Aヒト正常食道上皮細胞株で検討したがこれについても否定された。我々はさらにHET-1A細胞の機械受容チャネル候補として、TRPV4, TRPV1, TRPV1b, Piezo1, Piezo2の遺伝子断片が発現していることを見いだし、上皮についてはこれら遺伝子の解析を継続している。また近年同じファミリーに属するASIC1aが胆汁酸により応答増強することが報告された (Ilyaskin et al., 2017)。ASIC5はもとよりASIC1aとともに他のASICサブタイプも胆汁酸感受性を有する可能性があることから、これまでの研究で不明な点が多いASIC4に注目して解析を進めた。ASIC4-lacZレポータマウスを使ってその発現を解析したところ、上部消化管では胃の筋間神経叢の一部のニューロンにその発現を認めた。現在野生型とASIC4ノックアウトマウスを用い検討をすすめている。
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